曇、29度、74%
掃除をしていてふと手が止まって、小さな入れ物の蓋を取りました。 5センチほどの中国の塗りの入れ物です。双魚が描かれていたのですが、安い代物で2匹とも取れました。中を見たのはもうずっと以前、帰国後初めて開けたのかもしれません。何を入れてあるのか忘れています。
出て来たのは小さなイヤリング、片方だけです。小さく花が描かれたガラス玉がぶら下がるイヤリングです。これは結婚前の主人が初めて私に買ってくれたものです。
45年前、自由が丘の夜の街を散歩していました。当時の自由が丘今ほどの賑わいはありませんでしたが、若い人が集まる街でした。駅近くの路上に布を広げて手作りのアクセサリーを売っていました。しゃがんで見ていると、まだ結婚する前の主人が「どれか買ってあげるよ。」と言ってくれました。選んだのがこのイヤリングです。ちゃんと2つ揃っていました。毎日身につけて大事にしていましたが、ある時片方ないのに気付きました。落としたのです。
イヤリングが好きでたくさん持っていました。そして片方だけになったイヤリングもたくさんありました。帰国前、片方のイヤリングは全部捨てました。このイヤリングだけは捨てれませんでした。そして小さな黒塗りの入れ物に入れて引っ越しの荷物に入れました。5年間一度も開けなかったのに、何の拍子にか蓋を取りました。
45年、長いようで短くもありました。思い出が次から次に胸をよぎります。実はこの小さな黒塗りの入れ物は香港で初めて主人が私に買ってくれたものです。昔のピークのお土産物屋さん、香港が見渡せるピークはその日はガスがかかっていて何もみえませんでした。小学生の息子も一緒でした。まさか30年も住むことになるとは思ってもいなかった香港生活が始まったばかりの頃です。
おそらく主人はイヤリングも入れ物のことも記憶にはないと思います。