曇、6度、78%
ハサミを持って上向き加減で庭仕事をしていると、よく足元の切り株に気づかずにつまずくことがあります。地面に残された切り株、直径が4、50センチもあるものから干からびて20センチほどに小さくなったものもあります。
8年ほど前に庭の大規模な改修工事をしました。母は晩年手入れを怠ったので、木々は伸び放題、鬱蒼としていました。思い切りよく木を切ってもらうことにしました。でもその木を切る現場を私は見ていません。当時はまだ香港住まい、造園の方にお任せで一時帰国して木がなくなった庭を見て、その明るさに驚きました。この家の庭木は私より歳取った木ばかりです。大きな木を切るためにクレーン車まで入ったと聞きました。まだ真新しい切り株にはその木その木の匂いがしました。
大きな切り株につまずくことはありません。大きな切り株にこの8年間でフィカスプミラが巻き付き始めています。 一番最近切ってもらった切り株はクスです。 切り株の横からひこ枝が伸びてきました。 これは松の大木でした。母が亡くなると同時に枯れ始めてこの木は枯れ木を切ってもらった唯一のものです。
庭を廻っって切り株の数を数えました。大小合わせて10個。どんな木だったか木姿も名前すらも覚えていません。その晩、木のことを思いながらお風呂に浸かっていました。「切った木は10本以上だわ。」と気付きます。表の道に面した庭にもいく本も木がありました。今では車を停めるため、地面は舗装されています。あの舗装された下にも切り株があるはずです。
8年経って朽ち始めた大きな切り株もあります。 何の木だったのでしょう。ひと雨ごとに大きな木片が溢れて、根まで朽ちてきています。大きく張り巡らされた根が腐ると地面が陥没します。木質の柔らかな木だったんでしょう。
たくさんの木を犠牲にして明るさをもらいました。木を切ったのにその庭に新しく木を植えています。日の通りが良くなった庭に植えられたオリーブやレモン、ローズマリーはたった3年で大きく育ちました。日差しのおかげです。
こんなに切ったのにまだ一抱えもあるモチノキやマキ、梅、どんぐりの木があります。裏庭の空間に立って空を見上げます。小さい頃は木ばっかり茂っていました。空間の大事さを感じるとともに切ってしまった木への思いがまた膨らみます。