曇、22度、76%
主にインドで水牛やヤギの乳から作るバターが、「ギー」です。「ちびくろさんぼ」のお話の中に出てくるパンケーキを焼く時の「ギー」です。「ちびくろさんぼ」では虎たちがぐるぐる回って溶けてできたのが「ギー」だとなっていますが、実際は水牛の乳から作ったものです。バターと違うところは製造の仕方らしく、常温でも固形です。24度の台所で、 この状態。色はずっとバターより黄色がかっています。インド料理には欠かせない食用油です。ギーが常温で固形なのは、気温の高いインドで保管に適しているのだそうです。
インド料理を作り始めてずっとこの「ギー」を使ってきました。無塩の「ギー」を加熱するとバターよりまだ優しい香りがします。バターで代用しても良さそうですが、やっぱり「ギー」と思っていました。数年前、インドの家族ぐるみの友人宅に夕飯に呼ばれました。厚かましくも台所を見せていただくチャンスがありました。料理の下働きの人が二人もいる台所です。香辛料の使い方やチャパティと呼ばれる全粒粉のパンの焼き方を見せてもらいます。チャパティを焼く時にびっくり、オリーブオイルを使っています。「ギー」は動物性のオイルです。インドでもコレステロールが問題視され、植物オイルしかもオリーブオイルが奨励されていると聞きました。翌日インドのスーパーに行った時、オイルの棚を見れば種類も豊富にオリーブオイルが並んでいました。以来、私もインド料理を作るときもオリーブオイルを使うようになりました。インド人のシェフですらオリーブオイルやココナッツオイルを使う時代です。
インド料理のコクやほのかな甘みは、大量の玉ねぎばかりでなく「ギー」のおかげではと思い当たったの最近のことです。味に奥行きが出るような気がします。そんなわけで久々に「ギー」の缶を開けました。香辛料を炒める時にも使います。ナンやチャパティにも塗っていただきます。
今回は主人の希望で「ブリアニ」を作りました。南アジアのご馳走ピラフです。普段は「プラオライス」と呼ばれる白いご飯ですが、お祝い事などではこの「ブリアニ」が出されます。マトンや鶏を使います。カシューナッツや金箔が入ることもあります。鶏とくるみの「ブリアニ」を作りました。お米はインド産の「バスマティライス」を使っています。ロンググレインですが、タイ米と一味違った軽く、優しい香りのするお米です。お米もしっかりと「ギー」で炒めて炊き上げます。 そして蒸らしている時にもうひと塊り「ギー」を落とします。ふわっと「ギー」のいい香り。
たくさん摂取するわけではありません。やっぱり「ギー」はインド料理には欠かせないと思います。「ギー」の香りを嗅ぐと、インドのむせるような重い空気を思い出しました。