
妙本寺の参道の山路にすみれがひっそりと咲いていた。今年、初見の菫だった。芭蕉の名句を思い出した。
山路来て何やらゆかしすみれ草

山路に巨木の、なきがらがあった。大銀杏を思い出してしまった。
山路来て何やらかなし根株かな (リメイク)


中也と小林秀雄の”和解”の名木は大丈夫だった。当時の海棠は前年に死に花を思いっきり咲かせて枯れた。今のは二代目か三代目である。

もう、蕾が膨らんでいた。”あゝ!そのやうな時もありき、海棠の花の散る日なりき”

楓が芽をまっかにはらしていた。春だというのに、なにがそんなに悲しいのだろう。それともただの、花粉症だろうか。


このお墓をみて泣いていたんだね。一幡のお墓。あの大銀杏の陰に隠れていて、おじの実朝を殺害した公暁の母違いの兄弟。一幡は、二代将軍、源頼家と(比企能員の娘)若狭の局との子供だった。本来、三代将軍になるはずだったが、北条氏の陰謀で殺害された。妙本寺は比企家の屋敷跡だった。
そんな歴史を全部知っている、大銀杏も逝ってしまった。それで目をはらしていたんだね。

帰りにまた、菫をみた。
山路来て何やらかなしすみれ草