箱根に遊んだとき、ポーラ美術館にも寄った。ちょうど、日本画展があったからだ。ポーラのオーナー鈴木常司は、40年かけて、フランス印象派、エコール・ド・パリ等の西洋絵画を中心に、一万点近く美術品を蒐集してきたが、その中に、多数の日本画も含まれている。今回、それらの中から前後期合わせて、約120点が特別展示されている。開館初の日本画展だそうだ。
”杉山寧、不朽の名作「水」を中心に”のサブタイトルが示すように、杉山寧の作品が圧倒的に多い。鈴木が好んだのか、パトロンになっていたのかそれは知らない。杉山は”私は純粋絵画という言葉に強くあこがれる、画面から情緒的なもの、文学的要素も排除する、自分の作品を造形主義と呼ばれるのもそのせいだろう”と述べているが、そうゆう目でみると、たしかに、そんな作品が多いと思う。
ぼくは、杉山寧の描く裸婦が好きで、とくに、今年はじめ山種で観た、渓流の岩場に身体を横たえる”響”が好きだが、杉山の裸婦は、あまり艶やかさみたいな感じは受けず、なんだか、うつくしい姿態の人魚をみているようだ。たしかに”造形的美”なのだ。この展覧会では残念ながら、ひとつの裸婦をみることができなかったが、その代わり、衣装をつけた裸婦(笑)や、花鳥や魚、静物や景色などをたっぷりみさせてもらった。
ちらしの表紙を飾った”水”(題名が一字のものが多い)。1962年エジプト旅行したときの印象を描いた。ナイル川を背に水甕を頭にのせて歩く、黒い衣装の美女。こちらをみて笑みを浮かべているようだ。画面下部と上部の土色は砂漠であろう。印象に残る、とてもいい絵だった。
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さまざまな色の鯉が、さまざまな方角にむかって泳ぐ、それでいてバランスのとれた構図と色。水にも黒い影が模様のように配されている。こういうのを”写実と抽象の融合”というのだろうか。
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杉山は富士山も描いていた。二点展示されていたが、赤富士の方を。
本展覧会は、第一部:横山大観とその周辺、第二部:杉山寧 純粋絵画への道、第三部:東山魁夷と日本画の旅情、第四部:平山郁夫 源流を求める旅 の構成展示になっている。それらの中に所蔵品(一部、東山魁夷館所蔵)の、 横山大観、川合玉堂、小林古径、安田靫彦、前田青邨、福田平八郎、福田平八郎、山本丘人、東山魁夷、杉山寧、山辰雄、加倉井和夫、横山操、平山郁夫の作品があるので、日本画が好きな方には、見どころ満載である。
前田青邨の、紅梅白梅の”春暖”が、とても暖かったし、東山魁夷は彼らしい作品”緑の湖畔”には心が休まったし、今年はあちこちでみた平山郁夫の、”イラン高原を行く”のロバに乗った母娘のこちらに向けた眼差しもとてもやさしかった。
緑の湖畔
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イラン高原を行く
杉山寧の裸婦はみられなかったが、常設展で、すばらしい裸婦と半裸婦(笑)にお目にかかり、とても嬉しかった。どちらも、名作で、黒田清輝の”野辺”と岡田三郎助の”あやめの衣”だ。あやめの季節にいいものをみせてもらった。
野辺
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あやめの衣
ポーラ美術館の前庭にひめしゃら林があるが、ひめしゃらも、あやめの衣に負けない美肌だった。こちらは安心して触らせてもらった(爆)。