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エリック・マコーマック『パラダイス・モーテル』

2012-04-03 10:54:00 | ノンジャンル
 岡野宏文さんと豊崎由美さんの共著『読まずに小説書けますか』の中で紹介されていた、エリック・マコーマックの'89年作品『パラダイス・モーテル』を読みました。
 わたし、エズラ・スティーヴンソンは祖父のダニエルがザカリー・マッケンジーという機関士から聞いたという話を、生前に聞かされます。それはある町で、ある外科医が妻を殺し、バラバラにしたその体の一部を4人の子供、すなわちレイチェルとエスターの姉妹、そしてエイモスとザカリー本人の兄弟の体内に埋めこんだという話で、ザカリーは腹の傷痕も見せてくれたというのです。今わたしは裕福な中年となり、ここパラダイス・モーテルで海を眺めながらうたた寝をしていましたが、ふとあの4人の子供のその後の運命を調べてみる気になり、旧友のクロマティ教授に調査を依頼する手紙を書きます。
 「エイモスは孤児院で育てられ、植物学に興味を持った後、人類のルーツを探るため、失われた遺跡を発掘することに情熱を注いだ」と書かれた、マクゴウのノート。わたしは南太平洋にあり健忘症の治療を行う《自己喪失者研究所》を訪れ、そこのヤーデリ所長から、エイモスがパタゴニアの調査中に原住民に捕まり、腹を割かれて植物の苗を植えられ、体ごと土に埋められた状態で発見され、病院に収容されて死んだことを聞かされます。
 「レイチェルは孤児院で育てられた後、無口な女性となり、タイプを習って北アメリカに渡った」と書かれた、マクゴウのノート。わたしは以前大きな新聞社を所有していたJPの田舎の別荘に行き、昔、レイチェルという名のタイピストが多重人格者で、男とつきあう自分を許せずに自殺したことを聞き出します。
 「エスターは孤児院で育てられた後、赤十字で働き多くの手術に立ち合った後、南西行きの船に乗った」と書かれた、マクゴウのノート。わたしはぶらっと出かけた南の熱帯で出会った男パブロから、体に串を刺す芸をしていた男の妻で、串を刺す役目をしていたエスターが、芸で夫を殺してしまった後、自殺したことを聞かされます。
 「ザカリーは孤児院で育てられた後、冒涜行為にふけり、小さな定期船の機関士になった」と書かれた、マクゴウのノート。ザカリーの情報を持っているイザベルという女性を発見したというクロマティからの連絡を受け、その女性に会いに行ったわたしは、クロマティがマッケンジー家を襲った事件についての情報を募集する広告を出したことで、彼が彼女を発見したことを知り、その女性は以前出版者を経営していた時に、ザカリーがマクゴウというペンネームで書いた小説を出したこと、その小説が民族主義者たちの怒りを買ったこと、その後に出された2册の彼の本が急に売れだしたこと、ある日彼は民族主義者たちに誘拐され、連れ出されたところには民族主義者たちが買い占めた彼の本が山積みにしてあり、それに火が放たれると、彼はその火の中に身を踊らせて死んだことを、わたしに教えてくれました。
 翌日、わたしはイザベルから、マッケンジーの兄弟姉妹が一堂に写っている写真と、ザカリーが書いたという日記のような原稿をもらい、モーテルに戻りますが、その後、わたしは猛烈な腹痛に襲われ、病院で手術を受けて、体内から何かを取り出され、それがマクゴウのノートと人間の手首だと知った医者らはわたしを殺そうとし、わたしが「やめてくれーーーっ!」と叫び声をあげると、わたしはモーテルで目覚めていて、マクゴウのノートを読んでみると、これまで書かれていたノートと同じ文章が書いてあり、一旦帰宅して、また休暇でパラダイス・モーテルを訪れると、そこにやって来たクロマティは、これまでの人物はすべて実在せず、わたしの祖父のダニエルもわたし・エズラも存在せず、今まで君に会ったことも一度もない」と言って去り、わたしはパラダイス・モーテルで海を眺めながらうたた寝をするのでした。

 結局すべて夢でした、ということでもあり、自分自身の存在も無になってしまうという話なのですが、岡野さんらが絶賛するほと面白いとは思いませんでした。グロテスクな描写が多く出て来るので、そういうのが好きな方はより楽しめるかもしれません。

→Nature Life(http://www.ceres.dti.ne.jp/~m-goto/