'12年に発表された、中編『炎路の旅人』と短編『十五の我には』からなる本です。
『炎路の旅人』の出だしのあらすじは次のようなものです。
帝が天ノ神の子孫だと信じられてきた国・ヨゴ皇国をタルシュ帝国は滅ぼさんとしていました。侵入してきたタルシュ軍は、都のさまざまな場所にちらばっている〈帝の盾〉の家族の隠れ家を一斉に襲撃してきました。〈帝の盾〉とはヨゴ帝の近衛兵で、他国の軍が宮殿を侵したときには、命を賭してヨゴ帝を守りぬくことを本懐とする最強の武人たちでした。タルシュ軍は、手向かいをしない民には手をだしませんでしたが、近衛兵など、征服された国の長に忠誠を誓っている武人たちに対しては、のちに敵討ちや、国の再興を考える者が現れぬよう、その家族から親族に至るまで完全に虐殺するので有名でした。〈帝の盾〉の一人であるヒュウゴの父は、ヒュウゴに「天に恥じぬ武人になって、母と妹を守るのだぞ」と言い残して、帝を守るために出陣していきました。
幼いヒュウゴは隠れ家から脱出する方法を自ら考え、大人に進言していましたが相手にされず、敵が先回りしているであろう裏口に殺到する他の家族らを尻目に母と妹を救い出そうとしましたが、自分たちだけが助かろうとするなどもっての他と言う母と、その母を追った妹は、裏口へ向かってタルシュ兵に殺され、ヒュウゴは燃え盛る隠れ家から逃れたところで気を失います。
気が付くと、ヒュウゴは若い女性リュアンに助けられ、彼女に家に運ばれて来ました。ヒュウゴの首には空を飛ぶ魚が巻き付き、彼女の首にも同じ魚が巻き付いていて、その魚を通して、二人は相手の思いを伝えることができました。そこへリュアンの父親ヨアルが漁から帰って来て、ヒュウゴの持つ短剣を見て、彼が〈帝の盾〉の子だと知ります。そしてヒュウゴとリュアンの首に巻き付いているのはタラムーと呼ばれている生き物で、炎が好きで、限られた者しか目にすることができないこと、リュアンが幼い頃死にかけた時から不思議な能力を備えるようになったこと、2年前に自宅が火事に会った時からリュアンはタラムーを見ることができるようになったことをリュアンは教えてくれるのでした‥‥。
上橋さんがあとがきで書いてらっしゃいますが、『炎路の旅人』は、『蒼路の旅人』の前に生まれたもので、『守り人』シリーズが『天と地の守り人』という大河物語の姿へ発展するきっかけとなった物語なのだそうです。その辺の事情をあとがきから引用させていただくと、「この物語(『炎路の旅人』)は、『蒼路の旅人』でチャグムをさらう、タルシュ帝国の密偵アラユタン・ヒュウゴが、なぜ、おのれの故国を滅ぼし、家族を虐殺した男の配下となって生きることになったかを描いた物語で、私の中にヒュウゴという男が生まれたことで、南の巨大な帝国タルシュが、命をもって立ち上がってきたのでした。同時に、ヨゴ皇国という、新ヨゴ皇国が派生していく元となった国の姿もありありと見え‥‥それが見えてきたことで、はじめて、北の大陸の国ぐにとチャグムがたどっていくであろう道が、私の中でくっきりと立ち上がってきたのです。しかし、ヒュウゴという男が、どういう男であるかを読者が先に知ってしまうと、『蒼路の旅人』でチャグムがさらわれたとき、読者は〈チャグムの気持ち〉に乗って読むことができなくなってしまいます。そうなってしまえば、物語の命が大きく損なわれてしまう‥‥ということで、『炎路の旅人』は書きおえた瞬間に、お蔵入りになる運命を持ってしまったのでした。」その後、「一冊の長編であった『炎路の旅人』を中編に書きなおし、さらに、これもまた、かつて生みだしかけたままお蔵入りになっていたバルサの若き日の物語を、しっかりと書きなおして加えれば、世に出す意味のある本になる、ということが〈見えた〉のです。」
実際、そうしてできたこの本は読みごたえ満点のものとなりました。冒険譚、ローイングプレーイング・ゲームの好きな方には特にお勧めです。なお、あらすじの続きは、私のサイト 「Nature Life」(http://www.ceres.dti.ne.jp/~m-goto/)の「Favorite Novels」の「上橋菜穂子(『炎路を行く人』以降の作品)」のところにアップしておきましたので、興味のある方は是非ご覧ください。
→Nature Life(http://www.ceres.dti.ne.jp/~m-goto/)
『炎路の旅人』の出だしのあらすじは次のようなものです。
帝が天ノ神の子孫だと信じられてきた国・ヨゴ皇国をタルシュ帝国は滅ぼさんとしていました。侵入してきたタルシュ軍は、都のさまざまな場所にちらばっている〈帝の盾〉の家族の隠れ家を一斉に襲撃してきました。〈帝の盾〉とはヨゴ帝の近衛兵で、他国の軍が宮殿を侵したときには、命を賭してヨゴ帝を守りぬくことを本懐とする最強の武人たちでした。タルシュ軍は、手向かいをしない民には手をだしませんでしたが、近衛兵など、征服された国の長に忠誠を誓っている武人たちに対しては、のちに敵討ちや、国の再興を考える者が現れぬよう、その家族から親族に至るまで完全に虐殺するので有名でした。〈帝の盾〉の一人であるヒュウゴの父は、ヒュウゴに「天に恥じぬ武人になって、母と妹を守るのだぞ」と言い残して、帝を守るために出陣していきました。
幼いヒュウゴは隠れ家から脱出する方法を自ら考え、大人に進言していましたが相手にされず、敵が先回りしているであろう裏口に殺到する他の家族らを尻目に母と妹を救い出そうとしましたが、自分たちだけが助かろうとするなどもっての他と言う母と、その母を追った妹は、裏口へ向かってタルシュ兵に殺され、ヒュウゴは燃え盛る隠れ家から逃れたところで気を失います。
気が付くと、ヒュウゴは若い女性リュアンに助けられ、彼女に家に運ばれて来ました。ヒュウゴの首には空を飛ぶ魚が巻き付き、彼女の首にも同じ魚が巻き付いていて、その魚を通して、二人は相手の思いを伝えることができました。そこへリュアンの父親ヨアルが漁から帰って来て、ヒュウゴの持つ短剣を見て、彼が〈帝の盾〉の子だと知ります。そしてヒュウゴとリュアンの首に巻き付いているのはタラムーと呼ばれている生き物で、炎が好きで、限られた者しか目にすることができないこと、リュアンが幼い頃死にかけた時から不思議な能力を備えるようになったこと、2年前に自宅が火事に会った時からリュアンはタラムーを見ることができるようになったことをリュアンは教えてくれるのでした‥‥。
上橋さんがあとがきで書いてらっしゃいますが、『炎路の旅人』は、『蒼路の旅人』の前に生まれたもので、『守り人』シリーズが『天と地の守り人』という大河物語の姿へ発展するきっかけとなった物語なのだそうです。その辺の事情をあとがきから引用させていただくと、「この物語(『炎路の旅人』)は、『蒼路の旅人』でチャグムをさらう、タルシュ帝国の密偵アラユタン・ヒュウゴが、なぜ、おのれの故国を滅ぼし、家族を虐殺した男の配下となって生きることになったかを描いた物語で、私の中にヒュウゴという男が生まれたことで、南の巨大な帝国タルシュが、命をもって立ち上がってきたのでした。同時に、ヨゴ皇国という、新ヨゴ皇国が派生していく元となった国の姿もありありと見え‥‥それが見えてきたことで、はじめて、北の大陸の国ぐにとチャグムがたどっていくであろう道が、私の中でくっきりと立ち上がってきたのです。しかし、ヒュウゴという男が、どういう男であるかを読者が先に知ってしまうと、『蒼路の旅人』でチャグムがさらわれたとき、読者は〈チャグムの気持ち〉に乗って読むことができなくなってしまいます。そうなってしまえば、物語の命が大きく損なわれてしまう‥‥ということで、『炎路の旅人』は書きおえた瞬間に、お蔵入りになる運命を持ってしまったのでした。」その後、「一冊の長編であった『炎路の旅人』を中編に書きなおし、さらに、これもまた、かつて生みだしかけたままお蔵入りになっていたバルサの若き日の物語を、しっかりと書きなおして加えれば、世に出す意味のある本になる、ということが〈見えた〉のです。」
実際、そうしてできたこの本は読みごたえ満点のものとなりました。冒険譚、ローイングプレーイング・ゲームの好きな方には特にお勧めです。なお、あらすじの続きは、私のサイト 「Nature Life」(http://www.ceres.dti.ne.jp/~m-goto/)の「Favorite Novels」の「上橋菜穂子(『炎路を行く人』以降の作品)」のところにアップしておきましたので、興味のある方は是非ご覧ください。
→Nature Life(http://www.ceres.dti.ne.jp/~m-goto/)