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京極夏彦『魍魎の匣』その5

2012-04-20 21:21:00 | ノンジャンル
 またまた昨日の続きです。
 『匣の中の娘』後編の原稿。「実験に使う■■牝■■。何事も順に行ふのが善い。綺麗に外すために■■が必要であらう。(中略) ―判読不能― (再開)何故上手く行かぬ。この不潔な體液が■■んでしまふのだろう。 ―判読不能― (再開)写真を手に入れる■■。三度も實験を重ね■■ら、上手く行かぬ訳が無い。 ―判読不能― (再開)酷い牝豚だ。御陰で折角記した原稿が汚れて仕舞った。(中略) (再開)原稿を書き直す時間は無い。また失敗だ。魂が穢れているから腐敗するのだ。今すぐ出掛けよう。あの娘を(中略)」
 木場は知人で映画の仕事をしている人物から、陽子が誰かに強請られて引退したという噂を聞き出します。強請っていたのは背が低く頭のでかい男だったと。
 京極堂は黒装束となり、仲間とともに御筥様を急襲し、彼らの仕組みを暴きます。御筥様の表札にあった「忠」というのは兵衛の父の名でした。兵衛は復員すると、息子の指が入った金属箱を発見します。それは誤って息子が箱の蓋で切断したものでした。そして京極堂は魍魎として集めた財産を信者に戻すことを命じ、兵衛の本当の息子・久保竣公を救わなければならないと兵衛に言います。そして京極堂はバラバラ死体遺棄事件の現場付近で噂された、箱を持った黒衣の幽霊とは久保であったことも告げます。
 一方、青木は久保の家の捜索に入ります。箱のような家に住む久保は殺人など犯していないと物凄い見幕でまくしたて、青木らを失神させて逃亡します。
 京極堂らは京極堂の家に戻り、兵衛が語った話を振り返ります。彼は箱作りに熱中するあまり、息子のことを顧みず、そのことで息子の恨みを買ったこと。久保の人生は幼児虐待、貧困、母の鬱病、両親の不和、自閉的な性格、失語症、身体的劣等感、目の前での母の自殺、苛め、孤独に満ちていたことを。
 一方、青木は久保を取り逃し、久保は公務執行妨害と暴行傷害の罪で緊急手配となります。久保の書斎である2階の部屋の床は血痕だらけで、原稿は血糊でべっとりと貼りついていました。引き出しの中には清野の住所録の原本もあり、1階の壁は全て大小の箱で埋まっていて、青木が一番右の箱の蓋を開けると、そこには四肢を切断された頼子がみっしりと詰まっていました。青木は再び失神します。そして4人の被害者の残りの部分も、その部屋の箱から発見されるのでした。
 そして数日後、今度は久保の両腕と両足が紐で括られて発見されます。一方、木場は謹慎を解かれ、拳銃を手に入れます。京極堂は仲間とともに陽子を連れて美馬坂研究所へ急行します。
 木場は単身研究所に飛び込み、美馬坂と対峙すると、拳銃を向けて彼に真実を語るように強要します。木場は加菜子を含めてのバラバラ殺人の真犯人が美馬坂だと考えているのでした。(明日へ続きます‥‥)

京極夏彦『魍魎の匣』その4

2012-04-20 05:55:00 | ノンジャンル
 昨日の続きです。
 警官の福本は木場に命じられて頼子たちが通っていた学校の校門で聞き取り調査をし、頼子が嫌われていたこと、加菜子がいなくなってから彼女のように振る舞っていることなどを知ります。
 京極堂は木場に、今しなければならないのは「いかに陽子の傷を癒してやるか」であると言い、バラバラ殺人と加菜子誘拐事件は別物だとも言います。木場は榎木津が京極堂に託したという陽子の住所を訪ねると、陽子は既に増岡から耀弘氏の死を知らされたと言いました。木場が陽子に美馬坂との関係を尋ねると、古い知人で、自分の父も医者だったと言います。母は不治の病であり、心が鬼と化していった母に耐えられず、父は去っていったのだと陽子は語りました。増岡が加菜子を捜すために探偵を雇ったことを知らせると、増岡からは一ヶ月のうちに加菜子の死亡が確認できない場合には陽子を代理人として相続の交渉を再開すると言われ、加菜子が帰ってきた時のことを考えて遺産を相続するつもりだと陽子は言います。木場は陽子が森の中で男を見たと嘘をついたことを指摘します。
 箱を持った幽霊を見たという、子供たちの数々の証言。
 京極堂は榎木津らから、頼子の家付近で久保を見かけた話を聞くと、それはまずいと言います。鳥口の調べた御筥様への最初の相談者は寺田に木材を卸していた業者で怪しい者ではなく、それ以外では変な手袋をした様子が変な若者が頻繁に出入りしていて、大きな木箱を大量に注文していたらしいと鳥口から聞くと、皆はそれが久保だということが分かります。呼ばれて来た警官の青木は、京極堂に言われ、すぐ頼子を保護するように警察に連絡します。そして京極堂は皆にせっつかれて、これまでに分かったことを語り始めます。まず、今回の事件は加菜子殺害未遂事件、加菜子誘拐未遂事件、須崎殺害及び加菜子誘拐事件、それに連続バラバラ死体遺棄事件の4つからなること。バラバラ死体遺棄事件の犯人は目撃情報と彼の書いた小説から考えても久保で、御筥様は祝詞と筥信仰から考えて、伊勢と筑上に住んでいたことのある久保が作り出したものであること。信者の名簿と思っていたものは実は住所録であること。久保が書いている小説は日記のようなもので、自分の実際の行動をそのまま書いたものであること。久保は名簿の順番で年齢の条件を満たす娘を被害者にしていったこと。それを考えると次の犠牲者は頼子であること。最初、峠道と相模湖で発見された死体は、金属箱に入っていて、その後のバラバラ殺人の木箱、箱の置かれ方とは異なるので、後のバラバラ死体遺棄事件とは別のものであること。陽子が森で男を見たという証言は虚偽だと分かったこと。頼子は加菜子に習って文芸雑誌を読み、その中で関口の小説に触れることによって「黒い服の男」という存在を創造したのであって、加菜子をホームから落としたのは頼子であること。頼子は加菜子の背中のニキビを見て、完璧であるはずの偶像が崩れ、そしてその行為に及んだこと。久保は一人住まいに違いなく、そこに3人の少女の死体の残りがあるはずであること。京極堂と美馬坂は以前職場を同じくした仲であり、あの研究所で京極堂は戦勝時のための宗教的洗脳実験をやらされ、美馬坂は死なない兵隊、機械人間の研究をしていたこと。それは天皇を死なずに済ますという名目で存続したこと。そこまで話したところで、青木へ警察から連絡が入り、新しい腕が見つかり、それが頼子のものであることが確認されたと知らされるのでした。(またまた明日へ続きます‥‥)

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