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劇団ひとり『青天の霹靂』その1

2012-04-29 06:53:00 | ノンジャンル
 劇団ひとりさんの'10年作品『青天の霹靂』を読みました。
 幼い頃の自分は特別な存在だと思っていた俺・轟晴夫は、いつの頃からか「特別じゃないかも‥‥」と思うようになり、そして35歳になっても独身で四畳半の部屋に住んでいる現在は、普通とか平凡以下の存在であるようにも感じてしまっています。本当の自分なんていない、いるのは、発泡酒を飲みながらスケベなDVD鑑賞を唯一の楽しみにしている駄目で惨めな自分、そういうふうに考え始めている俺なのでした。
 俺は小さなマジックバー『ノブキチ』で働く口べたな、17年のキャリアを持つマジシャンで、冴えない毎日を送っています。後輩のサワダはテレビの売れっ子となり、俺にタメ口をきくようになりますが、テレビに出たところで、どうせブームの時だけチヤホヤされて飽きたら捨てられると思う俺は、反感しか感じません。秘かに思いを寄せる客のママもサワダに取られ、サワダとの関係を聞き募った俺はママに嫌われてしまい、自己嫌悪に陥ります。
 そんな折り、深夜テレビで老いた腹話術師の姿を見た俺は、その姿に励まされて、幸せは待つものではなく勝ち取るものだと気付き、自分の負け犬根性を捨てるために、テレビのオーディションを受けようと決心します。俺は、自分のすぐ噛んでしまう癖を逆手に取って店長が考えてくれた、差歯をネタにしたマジックをし、オーディションで手応えを掴みます。そして合格の連絡を待っていると、そこへ父の死亡の知らせが警察から入るのでした。
 俺は警察で、ホームレスの親父が孤独死の状態で発見されたことを知らされ、父の遺骨を渡されます。俺が生まれた時、既に母は家を出ていってしまっていて、父一人に育てられたのですが、頼りなくひ弱な父親を嫌い、17年前に家を飛び出してからは、連絡も取っていませんでした。父が発見された荒川高架下の場所に行ってみると、そこには俺が幼い頃父と遊んだ手製のマジック用ダンボール箱が置いてあり、俺は自分と遊んでくれた父、マジックを教えてくれた父の姿を思い出し、一生懸命自分を育ててくれた父に心からごめんと言います。するといきなり光と轟音がなり響き、雷に打たれたようになった俺は意識を失います。
 気がつくと、そこは昭和48年の世界でした。どうしたらいいか分からず、俺は父の遺骨を渡された警察を訪れますが、時間に迷ったと言う俺を警察は気狂い扱いして拘束しようとし、俺は逃げ出します。俺は未来を知っているというチャンスを生かそうと考え、いろいろ考えた結果、マジシャンとして売り出すことを決心し、浅草の演芸場を訪ねます。支配人にスプーン曲げを見せて採用された俺は、日本語がしゃべれないタイ人のチャム・ポンという設定を支配人に考え出してもらい、マジシャンの師承が病に倒れ一人で舞台をこなしていた助手の悦子をアシスタントにして舞台に出ると、舞台をわかせることに成功し、悦子のファンであるという少年ノブキチ(彼は将来俺が勤めるマジックバー『ノブキチ』の店長になる)にも出会います。しかし悦子の師承が結核であることが分かり、感染の疑いのある悦子はしばらく舞台に出られなくなってしまうと、そこで新たなアシスタントとして支配人が連れて来たのは、悦子の前に師承の助手だったという轟正太郎、つまり俺の親父なのでした。
 親父はマジックも下手でしゃべりもできない、どうしようもない助手でしたが、人の良さだけは誰にも負けないという男でした。俺は親父と働くうちに、幼い俺と親父が遊んでいる時間が当時の親父にとって唯一の生き甲斐だったということを知ります。そして親父との舞台も何とか様になってきたある日、親父の妻つまり俺の母だという女性が訪ねて来ますが、それはどうしようもないあばずれ女で、一見娼婦とも見える女でした。(明日へ続きます‥‥)

→Nature Life(http://www.ceres.dti.ne.jp/~m-goto/