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京極夏彦『魍魎の匣』その6

2012-04-21 06:52:00 | ノンジャンル
 またまた昨日の続きです。
 そこへ京極堂らが到着し、京極堂は真実を語り始めます。陽子をゆすっていたのは須崎だったこと。彼は加菜子の出生の秘密を知り、それを加菜子にばらすと言ってゆすったこと。京極堂は美馬坂と一緒に働いていた時に、加菜子の出生の秘密をを知ったこと。弘弥氏はその事実を知っていた上で、父への反発から彼女に財産を譲ろうとしたこと。陽子引退の裏話がカストリ雑誌に載ったことで、また須崎が陽子をゆすりだし、自分の出生の秘密を知った加菜子は深く傷ついて家出をし、それを雨宮だけに知らせていたこと。雨宮は長く陽子と加菜子と一緒に暮らしていたせいで、家族同然の間柄になっていたこと。美馬坂は妻の病気の悪化を止めるため、人工臓器を作って、身体ごとそっくり取り替えることを考えたこと。それはある程度成功し、現在死を遅らせるため、これまでに何人かの怪我人が研究所に運び込まれたこと。そして加菜子もここへ運び込まれ、美馬坂が処置を施し、この建物を動かしてしまったこと。そして陽子は柴田の財産のことを美馬坂に話したことで、美馬坂は、その財産を投じて加菜子を生かし続けられる、つまり長年望んでいた生体実験を実行するに至ったこと。そして永遠に建物を動かすための費用を捻出するために、陽子が脅迫状を作ったこと。須崎は加菜子が死んでしまうことを前提にして財産を詐取しようとしていたこと。須崎は彼なりに人体の部分を生かす方法を研究していたこと。この建物自体が美馬坂が創った人間そのものなのだということ。誘拐事件の前に再び行われた手術とは胸椎を残した脊椎・骨盤の切除、及び四肢の切断であり、箱の中に生かされた加菜子は雨宮によって運び去られ、須崎も雨宮によって殺されたこと。連続バラバラ事件の犯人は久保で、彼は列車の中で雨宮の持つ、生きている加菜子の入った箱の中身を見てしまい、それにより呼び起こされた強迫観念によって犯行を始めたこと。しかし久保の実験は失敗し続け、先達に会おうとして、研究所を訪ねたこと。そして加菜子の出生の秘密とは、彼女の本当の父親が陽子の父でもある美馬坂であったこと。
 そして、美馬坂を訪ねた久保は「殺すつもりなどなかった。ただ、匣に入れたかっただけだ」と言ったのですが、美馬坂は「君が犯罪者にならずに済む方法はただひとつしかない。それは君自身が被害者になることだ」と答え、久保も人体実験の道具にされていたのでした。
 京極堂によって加菜子出生の秘密を明かされた美馬坂は、直ちにエレベーターで屋上へと上がり、そこで死体として発見されます。彼の首には久保の残骸が食らいついていました。そして木場は陽子を殺人並びに傷害の罪で逮捕します。
 美馬坂の下で働いていた技術者・甲田は全てを知っていました。建物の鉄の扉の中は全て人工臓器でしたが、甲田はその一つ一つを破壊し、最後に動力室も破壊すると、首を吊ります。
 京極堂は事件を振り返り、陽子は心神喪失状態で情状酌量の余地があるだろうと話します。雨宮はまだ行方不明のままでした。私たちは彼の行く末を案じながら、彼のことを羨ましくも思うのでした。

 1000ページを超える大著で、あらすじを書くだけでもこれほどの分量になってしまいましたが、それでもはしょらずに私が書けたのは、内容の面白さと文体の読みやすさのおかげだったのだと思います。箱に人間を「みっしりと」詰め込むというグロテスクな発想と、臓器を箱とし、建物全体を人間としてしまうという奇抜な発想が特に魅力的だったのではないでしょうか。時間のたっぷりある方、猟奇的な事件がお好きな方にはお勧めです。

→Nature Life(http://www.ceres.dti.ne.jp/~m-goto/