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コニー・ウィリス『航路(下)』その1

2012-04-12 16:40:00 | ノンジャンル
 やがてジョアンナのNDEにはブライアリー先生や霊媒師のステッドも現れるようになり、グレッグが死の間際に口にした「58」というのが、タイタニックの救助に向かったカルパチア号がタイタニックの沈没時に58マイル離れたところにあったことを示していたことを知ります。そして臨死体験の中で、また彼女の高校時代の授業の中でブライアリー先生が言っていた通り、ジョアンナにとってのタイタニックは「死の鏡像」に他ならないことにも気付きます。
 そんな時、長い間昏睡状態にあったカールが目覚めたという知らせが届き、ジョアンナが駆け付けると、彼は昏睡状態にあった間に、仲間がアパッチに殺された現場にいて、助けを求めて狼煙を送っていたと証言し、それを聞いたジョアンナは、NDEは死にゆく脳が助けを求めて神経系に対して送り出すメッセージであることを理解します。彼女はリチャードにそれを知らせるために、彼の行く先々に向かいますが、なかなか会えず、最後に訪れたERで彼の居所を聞こうとヴィエルに近づくと、彼女が押さえていた薬物中毒の若者が差し出したナイフに自分から向かっていってしまうのでした。
 ジョアンナは腹にナイフが刺さったことを意識し、ヴィエルらが懸命になって彼女の延命措置を行っているのも意識しながら、タイタニックにいる自分も意識し始めます。ヴィエルに「NDEは死にかけた脳が送り出す救難信号だとリチャードに伝えて」と必死に叫ぼうとするジョアンナでしたが、血があふれ出している口からは何も言えず、タイタニックで他の客から託されたメッセージを自分のものとともに瓶に入れて海に投げ出すと、後は暗闇に包まれ、最後にジョアンナは「SOS」とつぶやきます。
 ジョアンナが死んだことを伝えられたリチャードはERで彼女の遺体を目にすると、自分の研究室に急行し、ジテタミンを使って自らをNDE状態にして、彼女を死から救い出そうとします。体外離脱して、棚の上に生前のジョアンナが置いたヒンデンブルグのおもちゃを見つけるリチャード。しかし彼が行った先は、タイタニックの犠牲者の名前を発表しようとしている汽船会社の一室であり、目覚めると彼は既に2時間もNDE状態にいたことを知るのでした。
 ジョアンナの死後、彼女の姉がリチャードとヴィエルの元を訪ねてきて、「妹が最後は信仰を得て、神の裁きと地獄の劫火にさらされなくて済んだか?」と尋ね、ヴィエルが「死に際してジョアンナは何も言わなかった」と言うと、姉が「では妹は地獄に落ちてしまった」と言うに及び、彼らは姉を追い出し、ヴィエルはジョアンナが最後に「SOS 」と言っていたことを伝えます。(明日へ続きます‥‥)

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