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高橋洋『映画の魔』その3

2016-11-09 14:01:00 | ノンジャンル
 また昨日の続きです。
・「(前略)当初映画の普及に貢献したのはマジシャンたちであったのだが、(メリエスもその一人)、一方、彼らは19世紀の心霊主義(スピリチュアリズム)の時流に乗って登場した降霊術師たちを単なるイカサマのトリックだとして糾弾する急先鋒だったということである」
・「私はふと妄想する。スクリーンに映し出されたものをいとも平然と現実を受け入れること、それこそが壮大な黒魔術の罠なのではないか(後略)」
・「魔はどのように触知されるべきなのか。それが先に映画に導入された『劇』なる形式の力なのではないかと私は考えている」
・「もう一度『夜半歌声』の鏡の場面に立ち戻ろう。主人公が鏡の中に見たもの、それこそがかつて非現実の迫り来る列車がもたらした、見る者の存在を斬り裂く映像なのである。観客はその凄まじさをまさに『劇』の仕掛けによって追体験する。主人公は怒りの絶叫を上げる。『何故これほどまでにこの世の闇は深いのか!』彼が怒っているのはもはや硫酸を浴びせた富豪のみではない。この世のすべてを呪っている。それを端的に示すのは、彼を取り巻く、同情的であったなずの人々の反応であって、彼らはおびえ上がって、部屋の隅へと退いてゆくしかない。主人公の呪いの凄まじさがもはや自分たちが共存できる領域を超えてしまったことを彼らは直覚しているのだ」
・「(前略)まあ、そもそも顔の損壊というのが、グラン・ギニョールの十八番なのだが、私が想像するに、馬徐維邦の怪奇は、単にアメリカ製怪奇映画の影響だけではなく、いやそもそもそうしたアメリカ映画の元ネタともなったこのフランスの猟奇演劇にあるのではないだろうか」
・「『それは、深夜、墓場から立ち現れた男女の幽霊が語る身の上話なのであるが、観る者をして、地上に於ける人間の世界と、地下に於ける幽鬼の世界が交々に画面に現われ、同じ程度の現実性を錯覚させるような魔力を持つのである』(中略)これに近いことをやっているのは、フィルムに写った人間はすべて幽霊に決まっているという過激な常識に生きる鈴木清順ぐらいではなかろうか」
・「首なしは『死』や『死体』以上の何か、人間が向き合うことを本源的に拒否する何かを表しているように思う。私は幾度か『斬首』と書いた。そう言えば三島も斬首だったことを思いだし、ちょっとゾクッとした」
・「カタマリが近づいてくる気配がどんな時に訪れるか、それはある程度経験的に判っている。中川信夫にとってはそれが『ダンテ』であったのかも知れない」
・「(前略)映画の恐ろしさはトコトン“出来事”からしか始まってくれないことにある」
・「映画は徹底して通俗なのである。通俗とは本来、既存の通念の枠内に収まることを指すのだろうが、私はあらゆることを“出来事”化し、つまり見世物化する映画の獰猛さを通俗と呼びたい」
・「映画の魔力を呼び出すには、観客の理性を眠らせなければならない。映画の魔力は観客の無意識と響き合うのだ」
・「文学が、屈従をもららすもの、つまり人々の思考を萎えさせ、喜んで魂を(誇りを、自由を)明け渡す誘惑の装置として機能するならば、そのようなものは破壊しなければならない」
・「(前略)音を消してやや遠くから画面のみを見つめる、あるいは画面に背を向けて音のみを聞いてみる、といったことをしてみないと実感できない。そこで行われていることが、ただただ仕掛けの連続でしかないことを知って、実に寒々とした思いが走るだろう。そしてそのようなやり方をしてもなお、引き込まずにおかない画面や音ことが、私が目指したいと思う本物の仕掛け、スペクタクルを撃つ表現なのだ」
・「『では最初にさきほど上映されたTVアニメ「サイボーグ009太平洋の亡霊」について簡単な説明を高橋さんからいただきます』」
・「本当に今更見てもやっぱり脚本を書いたのはサミュエル・フラーじゃないかって気がするんですけど、この脚本を書いたのは辻真先という、ミステリー作家としても有名ですけど、当時の主だったアニメ番組のほとんどに脚本を提供していたシナリオライターです」
・「要するに、真珠湾攻撃がもう一回来るっている話で、呪いというのは、呪いがあるから物事が反復するのではなくて、反復が起こるから呪われていると感じるっていう、これが多分ホラー映画とか恐怖映画とか、呪いをテーマにした映画を作る時のポイントなんじゃないかと僕は思うんです」
・「(前略)『霊のうごめく家』っていう鶴田さんの代表作があって、最初に家族が引っ越してくる前の家を撮ってるんですが、ちゃんと、『霊のうごめく家』では、あの家を怖く撮ってるじゃないかと」
・「あるいは両性具有にしても、永井豪が凄いのはモロにそういうのを出してきますからね」(また明日へ続きます……)