昨日の東京新聞に「改憲って それはね… 料理や食事の会話から憲法解説 女性ファッション誌特集」と題された記事が載っていました。普段の生活や友人とのおしゃべりの中で、ごく普通に政治の話や改憲の話ができるように、またその際、指針となる考え方や実際の改憲内容などをわかりやすい言葉で解説した特集が女性誌をにぎわすようになったという記事でした。男性向け雑誌でも漫画雑誌でも、改憲や政治をタブー視することなく、真正面から論じるメディアがあってもいいと思うのですが……。
さて、恒例となった、水曜日の東京新聞に掲載されている、斎藤美奈子さんのコラム「本音のコラム」の第7弾。
まず、9月28日に掲載された「キツネとタヌキ」と題されたコラム。
「衆院本会議の代表質問に民進党の野田佳彦幹事長(というか前首相)が立っている。ものすごく不思議な光景である。思い起こせば2012年11月、この方が敵に塩を送るような解散に踏み切ったおかげで、今日の安倍政権ができたのだ。
野田幹事長(前首相)ままた『攻めるものを攻めきれず、守るものを守りきれていない』という理由で、TPP(環太平洋経済連携協定)承認に反対するとの立場を示した。ちょっと待ってよ。タヌキに化かされたような気分である。TPPといえば11年11月、この方がTPPへの交流参加を表明したのが騒ぎの発端ではなかった?
当時は野党だった自公もTPPには反対だったはず。JAなどによる反対運動がもっとも激しかったのも、野田政権の時代だった。それが安倍政権発足以降はなし崩しとなり、5年後には攻守逆転、主張も逆転。
たしかに現在では、米大統領候補のクリントン氏もトランプ氏もTPPに反対している。米在住の友人に『そっちの市民はTPPに反対なの?』と質問したら『当たり前でしょ。あんなのに賛成するのは一部の多国籍企業だけだわよ』と一蹴された。が、クリントン候補も当選後に態度を変えかねないそうで。
あっちもこっちも化かし合い。私もTPPには反対だけど、なんとなくバカにされた気分。」
また、10月12日に掲載された「あきれた判決」と題されたコラム。
「なにこれ。まだこんな判決だしてんの?
勤務する学校(中高一貫の日本大学第三中学・高校)が旧姓使用を認めないのは人権侵害にあたるとして女性教諭が起こした訴訟で、11日、東京地裁(小野瀬厚裁判長)は請求を全面的に退けた、のだそうだ。
いまどき旧姓使用を認めない学校も学校、そこに合理性があると判断した地裁も地裁である。
判決は『旧姓が戸籍名と同じように使われることが社会に根付いているとまでは認められない』とかいっているけど、思い出していただきたい。昨年12月、夫婦同姓は合憲だと判断した最高裁は『旧姓の通称使用が広まることで不利益は一定程度緩和されうる』といっていたんだよ。
選択的夫婦別姓を求めれば『旧姓を通称として使えばよい』。旧姓使用を求めれば『旧姓は社会に根付いていない』。矛盾していません?
選択的夫婦別姓に比べれば通称使用は妥協策だけれど、通称使用の範囲は年々拡大し、2015年2月以降は商業登記簿の役員欄に旧姓が記録できるようになった。17年からは住民票やパスポートにも、戸籍名と通称の併記を認める方向で調整が進んでいる。
『戸籍姓は婚姻前の姓よりも高い個人の識別機能がある』なぞとほざいている東京地裁は社会の動きにも女性の人権にも興味がないんだろうね。」
また、11月9日に掲載された「電通の戦陣訓」と題されたコラム。
「7日、電通に厚労省の強制捜査が入った。広告業界最大手でマスメディアにはアンタッチャブルな企業だと思っていたけど、広告から一応自由なNHKは熱心に報道。新聞各紙も健闘している。民放各社はどこまで切り込めるだろうか。
この件ですっかり有名になったのが、電通の4代目社長だった故吉田秀雄氏が1951年に定めたという『鬼十則』なるオキテである。『仕事は自ら創るべきで、与えられるべきではない』『取り組んだら放すな。殺されても放すな』などの文言はまるで東条英機の戦陣訓。企業(軍)の論理を社員(兵士)に押しつけている点では『生きて虜囚の辱を受けず、死して罪禍の汚名を残すことなかれ』と大差ない。
が、この鬼十則は高橋まつりさんの過労自殺と長時間労働が明るみに出る前まで、自己啓発の文脈で(電通の社内でも社外でも)肯定的に語られてきたのである。
電通には『電通報』というニュースサイトがあるのだが、相も変わらず業績の喧伝と社員の啓発に努めている。しかも強制捜査の当日、石井直社長は『社は大変厳しい局面にあるが、皆さんの力を結集してともに新しい電通をつくっていこう』というメッセージを社員に出したのだそうだ。社員を死なせておいて何が『新しい電通を』だ。これも一種の戦陣訓? トンチンカンにもほどがある」。
今回も歯に衣着せぬ物言いに、痛快感を覚えました。
さて、恒例となった、水曜日の東京新聞に掲載されている、斎藤美奈子さんのコラム「本音のコラム」の第7弾。
まず、9月28日に掲載された「キツネとタヌキ」と題されたコラム。
「衆院本会議の代表質問に民進党の野田佳彦幹事長(というか前首相)が立っている。ものすごく不思議な光景である。思い起こせば2012年11月、この方が敵に塩を送るような解散に踏み切ったおかげで、今日の安倍政権ができたのだ。
野田幹事長(前首相)ままた『攻めるものを攻めきれず、守るものを守りきれていない』という理由で、TPP(環太平洋経済連携協定)承認に反対するとの立場を示した。ちょっと待ってよ。タヌキに化かされたような気分である。TPPといえば11年11月、この方がTPPへの交流参加を表明したのが騒ぎの発端ではなかった?
当時は野党だった自公もTPPには反対だったはず。JAなどによる反対運動がもっとも激しかったのも、野田政権の時代だった。それが安倍政権発足以降はなし崩しとなり、5年後には攻守逆転、主張も逆転。
たしかに現在では、米大統領候補のクリントン氏もトランプ氏もTPPに反対している。米在住の友人に『そっちの市民はTPPに反対なの?』と質問したら『当たり前でしょ。あんなのに賛成するのは一部の多国籍企業だけだわよ』と一蹴された。が、クリントン候補も当選後に態度を変えかねないそうで。
あっちもこっちも化かし合い。私もTPPには反対だけど、なんとなくバカにされた気分。」
また、10月12日に掲載された「あきれた判決」と題されたコラム。
「なにこれ。まだこんな判決だしてんの?
勤務する学校(中高一貫の日本大学第三中学・高校)が旧姓使用を認めないのは人権侵害にあたるとして女性教諭が起こした訴訟で、11日、東京地裁(小野瀬厚裁判長)は請求を全面的に退けた、のだそうだ。
いまどき旧姓使用を認めない学校も学校、そこに合理性があると判断した地裁も地裁である。
判決は『旧姓が戸籍名と同じように使われることが社会に根付いているとまでは認められない』とかいっているけど、思い出していただきたい。昨年12月、夫婦同姓は合憲だと判断した最高裁は『旧姓の通称使用が広まることで不利益は一定程度緩和されうる』といっていたんだよ。
選択的夫婦別姓を求めれば『旧姓を通称として使えばよい』。旧姓使用を求めれば『旧姓は社会に根付いていない』。矛盾していません?
選択的夫婦別姓に比べれば通称使用は妥協策だけれど、通称使用の範囲は年々拡大し、2015年2月以降は商業登記簿の役員欄に旧姓が記録できるようになった。17年からは住民票やパスポートにも、戸籍名と通称の併記を認める方向で調整が進んでいる。
『戸籍姓は婚姻前の姓よりも高い個人の識別機能がある』なぞとほざいている東京地裁は社会の動きにも女性の人権にも興味がないんだろうね。」
また、11月9日に掲載された「電通の戦陣訓」と題されたコラム。
「7日、電通に厚労省の強制捜査が入った。広告業界最大手でマスメディアにはアンタッチャブルな企業だと思っていたけど、広告から一応自由なNHKは熱心に報道。新聞各紙も健闘している。民放各社はどこまで切り込めるだろうか。
この件ですっかり有名になったのが、電通の4代目社長だった故吉田秀雄氏が1951年に定めたという『鬼十則』なるオキテである。『仕事は自ら創るべきで、与えられるべきではない』『取り組んだら放すな。殺されても放すな』などの文言はまるで東条英機の戦陣訓。企業(軍)の論理を社員(兵士)に押しつけている点では『生きて虜囚の辱を受けず、死して罪禍の汚名を残すことなかれ』と大差ない。
が、この鬼十則は高橋まつりさんの過労自殺と長時間労働が明るみに出る前まで、自己啓発の文脈で(電通の社内でも社外でも)肯定的に語られてきたのである。
電通には『電通報』というニュースサイトがあるのだが、相も変わらず業績の喧伝と社員の啓発に努めている。しかも強制捜査の当日、石井直社長は『社は大変厳しい局面にあるが、皆さんの力を結集してともに新しい電通をつくっていこう』というメッセージを社員に出したのだそうだ。社員を死なせておいて何が『新しい電通を』だ。これも一種の戦陣訓? トンチンカンにもほどがある」。
今回も歯に衣着せぬ物言いに、痛快感を覚えました。