2023年10月12日(木)
主張
ガザ地区戦闘激化
双方自制し暴力の連鎖止めよ
パレスチナのガザ地区を統治するイスラム組織ハマスとイスラエルによる攻撃の応酬で連日、多数の死傷者が出ています。ハマスは拉致した人を殺害すると脅しています。イスラエルはガザを空爆し、電力、食料、燃料の供給を遮断すると発表しました。地上侵攻も強行する構えです。流血の拡大は長年にわたる紛争の解決をさらに遠ざけます。双方が自制し、暴力の連鎖を止めなければなりません。
国際人道法に反する蛮行
ハマスはイスラエルにロケット弾を撃ち込み、同国内から民間人を連れ去りました。戦時に文民への武力攻撃や人質を禁止した国際人道法に違反する蛮行です.
グテレス国連事務総長が「何があろうとこうしたテロ行為や民間人誘拐は正当化できない」と述べたのをはじめ国際社会から厳しい非難の声が上がっています。
イスラエル軍は住宅や医療機関を含めガザを無差別に空爆しています。地区のほとんどをイスラエルに囲まれ、ライフラインを同国に依存するしかないガザにとって電力などの供給停止は死活問題です。住民全体に報復を加えるのは、これも国際人道法に反する許しがたい行為です。
ガザは1967年の第3次中東戦争でヨルダン川西岸地区などとともにイスラエル軍に占領されました。同軍は撤退後も封鎖と空爆、地上侵攻を繰り返しました。今も包囲され「天井のない監獄」と言われます。
街を破壊された上、人や物の出入りを厳しく制限されて住民は自活が難しく、国連などの支援物資に頼っています。イスラエルが半世紀以上もガザを悲惨な状態に置き、ヨルダン川西岸で国際法違反の入植を続けていることが問題の根底にあります。
中東和平をめざす上で重要なのは(1)イスラエルの占領地からの撤退(2)パレスチナ独立国家の樹立を含む民族自決権の実現(3)両者の生存権の相互承認―の三つの原則です。国連決議などで認められた国際社会のコンセンサスです。
第2次世界大戦後、パレスチナの独立とユダヤ人国家の樹立が問題になった際、1947年の国連総会はパレスチナをユダヤ人国家、アラブ人国家、国際管理都市エルサレムに分割する決議を採択しました。アラブ諸国はこの時、反対しました。翌年、ユダヤ人国家のイスラエルが建国され、アラブ諸国と武力紛争になりました。
分割決議には領土の割り当てでイスラエルに有利な面はありましたが、パレスチナに住む二つの民族の自決権に基づく二つの国家の樹立の権利を認めています。
事態の打開へ外交努力を
93年のオスロ合意ではパレスチナ解放機構(PLO)とイスラエルが互いに存在を認め合い、パレスチナの暫定自治が発足しました。しかし双方が、相互承認に反対する勢力を内部に抱え、それ以上の進展はありませんでした。ハマスもイスラエルを認めていません。
今回の事態は暴力によって何も解決しないことを改めて浮き彫りにしています。パレスチナ国家の実現と、イスラエルとの共存につながる交渉を通じてのみ、紛争を終わらせることができます。
戦闘のエスカレートを防ぎ、和平に向けた道を切り開くため、あらゆる外交努力を行うことが各国と国際機関に求められています。