モルドバ内の親ロシア派地域、2日連続攻撃受け…
ウクライナ南西部の状況悪化に
親ロ勢力「ウクライナ側が攻撃」
ウクライナ「ロシアによる挑発」
ウクライナ南西部と国境を接するモルドバ内の親ロシア派支配地域が2日連続で攻撃を受け、緊張が高まっている。同地域の衝突は、ロシアの攻撃を受けているウクライナ南西部の状況悪化へと広がる危険性がある。
モルドバ内の親ロシア分離主義政権である「トランスニストリア」(沿ドニエストル)は26日(現地時間)、ロシア語のラジオ放送伝送用のアンテナ塔と軍部隊が攻撃を受けたと発表した。ロイター通信が報じた。トランスニストリア当局は、ウクライナ側から攻撃されたものとみられるとして、「テロの危険」を赤に引き上げ、検問所を設置するなど統制を強化した。この日の攻撃は、前日に保安省の建物がロケット推進榴弾と推定される兵器で攻撃を受けたことに続くもの。
トランスニストリアのワジム・クラスノセルスキー議長は、「攻撃の出所はウクライナと把握された」とし、「この攻撃を試みた者は、トランスニストリアを紛争に引き込もうとしているとみている」と述べた。ロシアのタス通信が伝えた。
トランスニストリアは旧ソ連が崩壊し始めた1990年に、モルドバからの分離独立を宣言した親ロシア派が建てた政権であり、国際的には国家として認められていない。モルドバとウクライナの国境に沿って帯状になっているこの地域は、4163平方キロメートルほどの面積に人口約40万人が居住している。住民全体の約30%がロシア系。この地域は1992年の協定によりロシア、モルドバ、トランスニストリアが構成した共同調停委員会の監督を受けている。ロシアは平和維持軍の名目で同地域に約1500人の軍人を駐留させている。
ウクライナ側は、ロシアがオデーサ(オデッサ)などのウクライナ南西部への攻撃にトランスニストリアを活用する可能性を警戒している。オデーサなど南西部地域は、黒海沿岸でロシアがまだ占領していない地域であり、この地域すら支配されれば、ウクライナの黒海への接近が完全に遮断される。ロシア軍中部軍管区のルスタム・ミンネカエフ副司令官は最近、ロシア軍の目標の一つはウクライナ南部を掌握し、トランスニストリアに接近する通路を確保することだと述べている。この発言は、ロシアがウクライナ南部を永久に占領するとの意図を表したものと解釈された。
ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は、トランスニストリアの緊張の高まりはロシアによるモルドバへの脅し工作だとし、「ロシアが計画した次の段階をみている状況だ」と主張した。これに先立ち、ウクライナ外務省も「この地域をウクライナに対する全面戦争に引き込もうとする、必死の試みを糾弾する」と述べている。
モルドバ政府は同日、緊急安保会議を招集し、この地域の状況監視を強化することを決めた。モルドバのマイア・サンドゥ大統領は記者会見を開き、「これまでに確保した情報によれば、緊張を高める試みは地域内の分離主義勢力によるもの」と主張した。一方、ロシア外務省は、ロシアがトランスニストリアに介入する状況は避けたいと明らかにした。