みどりの一期一会

当事者の経験と情報を伝えあい、あらたなコミュニケーションツールとしての可能性を模索したい。

《悩みのるつぼ》Q子育て中、虐待の記憶が:A(上野千鶴子)最初から弱音を吐いておくこと

2014-11-17 19:49:33 | ジェンダー/上野千鶴子
11月14,15日は東京で上野さんとご一緒していたのですが、
ちょうど朝日新聞beの《悩みのるつぼ》が上野千鶴子さんの番でした。

テーマは、質問者の子ども時代の虐待のことです。

 《悩みのるつぼ》 
2014年11月15日 朝日新聞

 子育て中、虐待の記憶が…… 
相談者 母親 30代

 30代、育児1年目の母です。娘と接していると、私自身が子どもの頃、親がどう接してきたかの記憶が、断片的なイメージとなってよみがえってきます。・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(略)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
 母と話し合い、気持ちに決着をつけようにも、現在母は70歳手前で、父とは熟年離婚し、ひとり暮らし。自分がしたことを覚えていないからか、気まずいからか、そうした話題になりそうになると逃げます。

 父とは音信不通で、私は、母と疎遠になればそれなりに楽になると思いますが、実際は母が電話やメールで孫の様子をときどき尋ね、その度につらい自分の子どもの頃の記憶がよみがえり、しばらくの間落ち込むということを繰り返しています。

 母の現状を考えると、連絡してこないで、とは言えません。過去のつらい体験にできるだけのみ込まれずに穏やかに過ごすためには、どうしたらよいでしょうか。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
最初から弱音を吐いておくこと
回答者 社会学者 上野千鶴子

 子育ては自分の成育歴をたどりなおす旅、といいます。あなたは子どもを育ててみて、自分の受けた親からの子育てを追体験して、今さらのように怒りを覚えているのですね。

 虐待の連鎖といういやなコトバがあります。虐待された子どもは親になると虐待を繰り返す、という傾向です。でも誰もがそうなるわけではありませんから、母親の子育てを虐待だったと思い返しているあなたは、自分の子どもには決してそんなふるまいはすまい、と母親を反面教師に固く決心しているのですね。決意を実行するには、口に出すに限ります。「毎日1万歩歩くぞ」と宣言してまわるのと同じです。口に出せば引っ込みがつかなくなります。

 心のなかにたまりにたまったマグマははき出すのがいちばん。ただし当の親にぶつけるのはやめておきましょう。たいがいの場合、親はつごうの悪いことは忘れているか、自己正当化に走るからです。ですが子育てのパートナーである「何でも話せる夫」には洗いざらい不安も含めて話しましょう。「わたしがお母さんみたいになるのが怖いから、ちゃんと見ててね」「わたしを孤立させないでね」と。周囲の信頼できるママ友にも、「わたしは虐待を受けて育ったから子どもにはそうしたくないの、注意してね」とオープンに告げておきましょう。必要があれば母親にも「お母さんがわたしにしたようなことを娘にしてほしくないから、預けるのはやめるわね」と、責めるのではなく告げておくとか。母親も「まあ、人聞きの悪い」くらいは言うかもしれませんが、できるだけ自分の周囲を風通しよくしておくことです。

 わたしの友人は子育て中にこう言いました。「子どもと密室で3時間以上いると、母親は子どもに対して凶器になる」と。あなたの母親にも事情があったのかもしれませんが、裏返せば、誰だって同じ状況に置かれれば虐待の加害者になる可能性があります。彼女の解決法は単純明快。3時間経ったら必ず他人を入れたのです。子どもはひとりでは育てられません。絶対に負けない方法は、最初から弱音を吐いておくこと。子育てでカッコつけようなんて思ってはいけません。「わたしぃ、被虐待児だからあ、うまく子どもが育てられるか心配で」と少し大げさに周囲にいいふらしておけば、まわりが目を配り、手も出してくれます。「被虐待児」も百回言えば明るく言えるようになります。


応援クリック人気ブログランキングへ してね 

以下は、関連の記事です。

  虐待相談:児相の子供安全確認 48時間以内にカベ 
毎日新聞 2014年11月15日 

 全国207カ所の児童相談所(児相)が昨年4〜5月に受理した虐待相談(通告)を巡り、結果的に虐待が認められたり疑われたりした7434人のうち約8%の子供の安全確認が努力義務とされる48時間以内に実施できていなかったことが全国児童相談所長会(東京)の調べでわかった。「48時間ルール」の運用状況の詳細が明らかになるのは初めて。児相の調査権に明確な規定がないことなどが背景にあるとみられ、厚生労働省は初動対応の迅速化に向け、児童虐待防止法や児童福祉法を見直す検討に入った。
 厚労省の指針は、児相や市町村が通告を受けてから48時間以内に安全確認するのを努力義務としている。

 調査は各児相が昨年4〜5月に受けた虐待通報1万1257人について回答。このうち2972人は虐待がなかったが、7418人は虐待があると判断された。また、通報後の状況が不明で虐待が疑われるケースも16人いた。

 また、両者を合わせた7434人中、6799人は48時間以内に安全確認できたが、576人についてはできなかった。この中には頭部外傷や栄養不良など「生命の危機」がある子が5人おり、性的虐待や打撲傷を含む「重度」の虐待を受けた子も19人含まれていたことも判明した。

 48時間内に安全確認ができなかった理由(複数回答)は、「(子供の居場所の特定など)調査に時間がかかった」が最多で全体の20.7%。「子が特定できなかったり、所在が分からなかった」14.9%▽「訪問したが不在」11.3%▽「訪問を拒否された」3.8%−−などが続いた。

 また、48時間以内に安全が確認できなかった576人については、昨年9月末までに8割(445人)は確認できたが、92人はできなかったという。

 初動となる安全確認を巡っては、個人情報保護を理由に学校や病院から断られる場合もあり、現場からは「法律に調査権と回答義務を明記すべきだ」(都内の児相所長)との指摘に加え、児童福祉司1人が100ケース以上を持つ児相もあることから「人員不足で限界」との声も根強い。

 全国児童相談所長会会長の桜山豊夫東京都児童相談センター所長は「初動で安全が確認できない中に生命の危機がある子がいるのは深刻だが、場所のあいまいな『泣き声だけの通報』も多く、難しさもある」と指摘している。【野倉恵】


  ハーグ条約で“子を日本から外国へ”初事例 
2014.11.12 NHKニュース

国際結婚の破綻などで子どもが一方の親に国境を越えて連れ出された際、原則として子どもをもともと住んでいた国に戻すルールを定めた「ハーグ条約」に基づいて、日本にいる子どもが外国に初めて戻されたことが分かりました。

ハーグ条約に基づいて日本から外国に戻されたのは、日本人の母親とドイツ人の父親の間に生まれた5歳の男の子です。
外務省によりますと、男の子はもともとドイツで生活していましたが、ことし6月、父親の同意のないまま母親が日本に連れ帰っていたということです。これに対し、父親がハーグ条約に基づいて日本の外務省に支援を要請し、外務省の担当者を介して両親の話し合いが続けられてきたということです。その結果、母親が男の子をいったんドイツに戻すことに同意し、先月中旬、男の子は母親とともにドイツに戻ったということです。
ことし4月に日本で発効したハーグ条約に基づいて、これまで海外に連れ出された子どもが日本に戻されたケースはありましたが、日本に住む子どもが外国に返還されたのは初めてです。今回は両親の話し合いで解決しましたが、ハーグ条約では海外にいる親が日本の裁判所に対して子どもの返還を求めることも可能で、東京と大阪の家庭裁判所で少なくとも2件の申し立てが行われています。

日本への子ども返還はすでに複数実現
ハーグ条約は、世界的な人の移動や国際結婚の増加に伴って問題となってきた、一方の親による国境を越えた子どもの連れ出しを国際的に解決するためのルールを定めたもので、日本ではことし4月に発効しました。ハーグ条約の加盟国の間で一方の親が子どもを自分の母国など別の国に連れ出した場合、もう一方の親が連れ戻したいと希望すれば、現在子どもがいる国の政府機関が子どもの居場所を探したり、連れ出した親と交渉したりするなどの援助をします。また、その国の裁判所に返還を求める申し立てを行えば、裁判所は原則として子どもをもともと住んでいた国に戻すよう連れ出した親に命令を出します。原則として元の国に戻すのは、一方の親に国境を越えて連れ出された子どもは異なる言語や文化など生活環境が急変するうえ、もう一方の親との交流が断絶されるなど悪影響が大きく、いったんは元の状態に戻したうえで、その国の司法手続きに沿って子どもの養育環境を判断するのが望ましいと考えられているからです。
外務省によりますと、これまでに海外にいる親が日本にいる子どもを戻すよう援助を申請したケースは14件あるということです。また、東京と大阪の家庭裁判所に少なくとも2件の返還命令を求める申し立てが行われています。逆に日本にいる親が外国に連れ出された子どもを戻すよう求めたケースではすでに日本への子どもの返還が複数実現しています。 


  ハーグ条約:初の国外返還…日本人母の5歳児、ドイツへ 
毎日新聞 2014年11月12日

 国境を越えて連れ去られた子の扱いを取り決めたハーグ条約に基づき、日本人の母親と日本で暮らしていた5歳児が先月、外国に戻されていたことが、外務省への取材で分かった。日本で4月に条約が発効して以降、子が外国から日本に返還されたケースは3件あったが、日本にいる子どもが海外へ返還されたのは初めて。

 同省ハーグ条約室によると、この5歳児は父親がドイツ人で、日本とドイツの両方の国籍を持つ。親子はドイツで生活していたが、母親が今年6月、父親に無断で子を日本に連れ帰った。取り残された父親は8月下旬、ドイツ政府にハーグ条約に基づいて子の返還を求めた。

 ドイツ政府から日本の外務省に援助要請があったため、外務省が国内の母親に接触して交渉。話し合いを経て母親が子の返還に同意し、10月中旬、子は母親に連れられドイツへ戻されたという。

 ハーグ条約は、子を元いた国に返還するかどうかは連れ去られた側の申し立てによる裁判で決めるとするが、両国の政府の仲介で話し合いにより解決することも認めている。今回は、裁判によらないで返還された。

 条約に基づく子の返還を巡っては、日本人夫婦の父親が5月、母親と共に英国に渡った7歳児の返還を求めて英国政府に直接援助を申請。英国の裁判所の命令で子が7月に日本に戻されたケースが初適用だった。

 その後、やはり日本人夫婦の母親が3歳児を無断で米国に連れ出し、日本に残された父親が日本の外務省を通じて返還の援助を申請。話し合いを経て母親が9月下旬、日本に連れ帰った。

 また、米国人の父親が日本人の母親に無断で8歳児をスイスに連れ出し、母親が日本の外務省を通じて子の返還を要請したケースでは、スイスの裁判所が返還命令を出し、9月下旬に子が日本に戻された。

 同省によると4月以降、日本の外務省に「子の返還」を求める援助申請は23件あり、日本にいる子の返還申請は14件、海外にいる子の返還申請は9件。【伊藤一郎】

 ◇ハーグ条約◇
 正式名称は「国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約」。一方の親が了解なしに子供を国外に連れ出した場合、もう一方の親の返還要求に基づき子供を元の国に戻す義務を規定している。国際結婚で破綻したケースが想定されているが、同じ国籍の夫婦にも適用される。日本では今年4月に発効し、7月には日本人の子の返還命令が初めて出された。加盟国は93カ国。 


最後まで読んでくださってありがとう
クリック してね
 

 記事は毎日アップしています。
明日もまた見に来てね
  



コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする