みどりの一期一会

当事者の経験と情報を伝えあい、あらたなコミュニケーションツールとしての可能性を模索したい。

上野千鶴子さん:「ネトウヨ」とは何者か?/『差異の政治学 新版』『発情装置 新版』

2015-12-17 10:54:01 | ジェンダー/上野千鶴子
先日、マーサの丸善書店に行ったときに、
岩波現代文庫のシリーズ「上野千鶴子の仕事」の新刊、
『差異の政治学 新版』と『発情装置 新版』の二冊を買ってきました。

『差異の政治学』は読書会で一年かけて読んだ本ですし、
『発情装置』は人生が変わるほどの衝撃を受けた本。

どちらも新たな章が収録されていて、
最後に「自著解題」も書かれています。

読む側も少しは成長しているのか、
さいしょに読んだときとは、またちがった感動があります。

岩波現代文庫の「上野千鶴子の仕事」は、
『家父長制と資本制』『ナショナリズムとジェンダー』なども刊行されていて、
上野さんの思想と理論を知りたい人には、おススメです。

岩波現代文庫 11月の新刊

  


  『差異の政治学 新版』
上野 千鶴子
 
岩波書店(岩波現代文庫)

■体裁=A6.並製・528頁
■定価(本体 1,600円 + 税)
■2015年11月27日
■ISBN978-4-00-600334-0 C0136

「われわれ」と「かれら」,「内部」と「外部」との間にひかれる切断線.ジェンダーをとってみても,人種をとってみても,「差別のない区別」はなく,必ずそこに権力関係が生じる.その力学を読み解き,フェミニズムがもたらしたパラダイム・シフトの意義と,今後の可能性を提示する.


  

  『発情装置 新版』
上野 千鶴子

岩波書店(岩波現代文庫)

■体裁=A6.並製・384頁
■定価(本体 1,360円 + 税)
■2015年11月27日
■ISBN978-4-00-600335-7 C0136

ヒトが欲情するのは,そうさせる「文化装置」があるから――.援助交際・婚活殺人・「こじらせ女子」など時代ごとの性風景や,春画・写真・オブジェなど古今東西のアートから,発情を強いる「エロスのシナリオ」を大胆に読みとく.性からタブー・虚飾を剥ぎとり,アラレもない姿を堂々と示す,迫力のセクシュアリティ論.  


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昨日の毎日新聞の夕刊テレビ欄の下にも、
上野千鶴子さんの写真と共に「読書日記」の記事が大きく出ていました。

「『ネトウヨ』とは何者か?」に紹介された本、
わたしも読んでみたいと思います。

 
【読書日記】今週の筆者は社会学者・上野千鶴子さん 「ネトウヨ」とは何者か?

毎日新聞2015年12月15日 

*11月17日〜12月14日
 ■鈴木さんにも分かるネットの未来(川上量生著・2015年)岩波新書・972円
 ■奇妙なナショナリズムの時代 排外主義に抗して(山崎望編・2015年)岩波書店・2916円
 ■ネット右翼の終わり ヘイトスピーチはなぜ無くならないのか(古谷経衡著・2015年)晶文社・1620円


 情弱こと情報弱者のわたしが読んでもわかる、ネットの本が出た。

 ニコニコ動画の発信元、ドワンゴの川上量生さんが書いた「鈴木さんにも分かるネットの未来」。「鈴木さん」とは、スタジオジブリのプロデューサー、鈴木敏夫さんのことだ。日本の伝統工芸のようなアニメには詳しいが、ネットには弱い。プロデューサーの勉強のために鈴木さんに師事した川上さんは、鈴木さんから代わりに、デジタルデバイド(情報格差)の上の年齢の「ぼくにもわかる」ネットについての本を書いてくれ、という要請を受けた。鈴木さんはわたしと同い年。鈴木さんにわかればわたしにもわかるだろうと思って、読んだ。

 思いがけない収穫は「ネトウヨ」と呼ばれるひとびとの生態について知ったことだ。ネット界の住民は名前も性別も年齢も不詳。よくわからないひとびとだが、まだネット界が開拓地だったころの住民たちは「リア充(じゅう)」を仮想敵としてヴァーチュアルな世界にニッチを求めた人々らしい。「リア充」とは「リアリティ(現実生活)が充実した人」の略称。男なら学歴があって職があって女にもてて、明るい生活を送っているひと。そんなひと、どこにいるんだ?と思うが、妄想の産物だからしかたがない。「非リア(充)」を自称するひとたちは正義を掲げるマスコミを「マスゴミ」と毛嫌いし、ことごとくそれと対立した。何であれ、マスコミと反対のことを言えばよいという風潮が生まれた。

 若手の政治学者、山崎望さん編の「奇妙なナショナリズムの時代」に収録された社会学者、伊藤昌亮さんの「ネット右翼とは何か」の分析によると、このネット界の空気が「嫌韓・嫌中」と結びついたのは歴史の偶然によるという。反マスコミの空気は2002年の日韓サッカー・ワールドカップを契機に「反日メディア」朝日新聞批判にも結びついたが、同時に韓流ドラマを過剰に放映する(と彼らには思えた)2011年のフジテレビへの抗議デモにも結びついた。その頃までは、ネット界の住民は自分たちがリアルの世界では報われない少数派だという自意識を持っていたようだ。

 だが、川上さんは、次の新世代のネットユーザーは、ヴァーチュアルとリアルとを区別しない相互乗り入れ型のネットの利用者たちであり、この層が膨大になったので、「ネトウヨ」世代はネット界でも少数派になったという。

 そのひとびとはどこに行ったのか? ジャーナリスト古谷経衡さんの「ネット右翼の終わり」はその歴史的変化について教えてくれる。「前期ネット右翼」から「後期ネット右翼」への移行は、川上さんや伊藤さんの分析と対応している。ネット右翼全般に理論武装を備給しているのは保守論壇だが、彼らから派生した「ネトウヨ」こと「狭義のネット右翼」はまともに本や新聞を読まずに扇情的な見出しにだけ反応する「ヘッドライン寄生」(うまいネーミングだ)をしているだけの人々なのだとか。保守論壇の影響下にある「広義のネット右翼」と、行動右翼を含む「狭義のネット右翼」とを区別して、「ヘイトスピーチ」を生み出す後者を激しく非難する。ふーん、知らなかった、という発見の連続だ。

 批判的知性とは、自分が不愉快な対象をも研究し理解しようとする姿勢のことだと、さる人が言っていた。周囲にそんな人がいないので理解できない「異文化」についても、時々は知っておいたほうがよい。

 筆者は上野千鶴子、松井孝典、津村記久子、松家仁之の4氏です。

 ■人物略歴
うえの・ちづこ
 東京大名誉教授、認定NPO法人「ウィメンズアクションネットワーク」理事長。「おひとりさまの老後」など著書多数。  


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