今年度のノーベル文学賞を受賞した、
スベトラーナ・アレクシエービッチさんの
『チェルノブイリの祈り 未来の物語』が、岩波書店から、
岩波現代文庫の文庫本として刊行されました。
上野さんの本といっしょに買ってきて、
じっくりと読みすすめているところです。
チェルノブイリには、事故からから10年目の1996年4月に行ったことがあります。
現地でわたしが出会った被災者の人たちはほんの少しですが、
この本は、一人ひとりの声とことばを丹念に聴き取って、
書いたものです。
訳者の松本妙子さんの名前は、どこかで聞いたことがあると
思っていたのですが、なんと、わたしといっしょに
1996年4月の「チェルノブイリ救援・中部」のスタディツアーに参加されていた方でした。
わたしは、前年に「チェル救援」の代表をしていたので、
前代表として、10周年の式典にも参加しました。
ノーモアチェルノブイリ!/原発事故から20年目に想うこと(2006-04-26 )
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『チェルノブイリの祈り 未来の物語』、
わたしたちにさしだされた、ひとつひとつの事実。
当事者の声を届けたいと書かれた本を、
かけがえのないいのちの物語を、
ひとりでも多くの人に読んでほしいと願っています。
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『チェルノブイリの祈り 未来の物語』が、岩波書店から、
岩波現代文庫の文庫本として刊行されました。
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チェルノブイリには、事故からから10年目の1996年4月に行ったことがあります。
現地でわたしが出会った被災者の人たちはほんの少しですが、
この本は、一人ひとりの声とことばを丹念に聴き取って、
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訳者の松本妙子さんの名前は、どこかで聞いたことがあると
思っていたのですが、なんと、わたしといっしょに
1996年4月の「チェルノブイリ救援・中部」のスタディツアーに参加されていた方でした。
わたしは、前年に「チェル救援」の代表をしていたので、
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ノーモアチェルノブイリ!/原発事故から20年目に想うこと(2006-04-26 )
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『チェルノブイリの祈り 未来の物語』、
わたしたちにさしだされた、ひとつひとつの事実。
当事者の声を届けたいと書かれた本を、
かけがえのないいのちの物語を、
ひとりでも多くの人に読んでほしいと願っています。
『チェルノブイリの祈り』 岩波書店web この本はチェルノブイリについての本じゃありません.チェルノブイリを取りまく世界のこと,私たちが知らなかったこと,ほとんど知らなかったことについての本です.見落とされた歴史とでもいえばいいのかしら.(中略)チェルノブイリは私たちが解き明かさねばならない謎です. ──本文より 編集者からのメッセージ 福島第一原子力発電所の事故は,今も深刻な様相を示しています.放射能汚染についての市民の憂慮も決して弱まっていません.このような時に,かつてのチェルノブイリ原発事故の被災地を丹念に取材した珠玉のノンフィクションをお届けしたいと思います. 本書の著者アレクシエービッチは,『アフガン帰還兵の証言』などで戦争が民衆をいかに傷つけたかを克明に描き出し,旧ソ連国内で権力からの抑圧や干渉を受けてきた作家です.1997年に刊行された原書も,ベラルーシでの出版は中止されました. 本書は1986年の大惨事から十年以上経過した時点で刊行された被災者へのインタビュー集ですが,事故直後から公にされた幾多の文献や映像が見落としていたこと,人々が黙していたことを聞き取って,チェルノブイリの真実を描くことに成功した傑出した作品です. 本書には次のような人たちのインタビューが紹介されています. チェルノブイリ原発の四号炉の建屋と原子炉が崩壊した直後に消火に駆けつけ,急死した消防士の妻は亡き夫をどう語ったでしょうか. 放射能で高度に汚染された地域から退避することを拒否して,カササギやオオカミと共に死んでいくことを選ぼうとしている老農婦.今も行方不明の被災者を捜し続ける女性.そして民族紛争の戦乱の中で故郷を追われてチェルノブイリにたどりついて生活を続ける若者たち. 護送車で原子炉から至近距離に連れて行かれて,黙々と汚染処理作業に除去した男の物語.ウォッカが放射線に効くからと毎晩酔いつぶれるほど飲みながら,汚染された表土をはぎ取り続けた作業員の日々.汚染地に伝染病がはびこらないようにひたすらペットや野生動物を撃つことを命じられた猟師たちの話. 隣町プリピャチから原発の火事を,最初はとても美しい光景として見物していた多くの人たち.疎開の準備を始める中でしだいに恐怖感が増していったこと.障害を持って生まれてきた子どもたち.異常な放射能値を示す患者とともに生きる医師. 上記以外にも,原発の従業員,サマショール(強制疎開の対象になった村に自分の一存で住んでいる人)ジャーナリスト,物理学者,被災者組織の中心メンバー,党幹部などの声も紹介されています.各章の末尾の「合唱」には氏名は記されていないが,各十数人の一言が引用されています. 「見落とされた歴史について」でアレクシエービッチは,本書がチェルノブイリ事故の概要を伝える本ではないこと,全く未知なる巨大事故に遭遇した人々が何を感じていたか,どんな気持ちでいたかを描こうとしたのだと語っています.そして本書には,「こんな場面はどんな本でも読んだことがない.映画でも見たことがない」という趣旨を語る何人もの人が登場しているのです. そしてアレクシエービッチは「私は未来のことを書き記している……」とことばを結んでいるのですが,フクシマの現実に向き合っている私たちにとって何と重たいことばでしょうか.本書のサブタイトルには「未来の物語」と付されているのです.とはいえ,読書の醍醐味を味わっていただける本であることも間違いありません. 解説をご執筆いただいた広河隆一さんも,ご自身の人生において本書は「もっとも大切な書物のひとつ」だと書かれています. 本書のご一読を心よりお薦めするものです. 追記 アレクシエービッチさんは2015年ノーベル文学賞を受賞しました.日本語で読める作品は5作ありますが,なかでも本書『チェルノブイリの祈り』 は世界30か国近くで読まれていて,まさに代表作といえます.この機会にどうぞご覧ください. 2015年10月 著者・訳者紹介 スベトラーナ・アレクシエービッチ(Svetlana Alexievitch) 1948年ウクライナ生まれ.国立ベラルーシ大学卒業後,ジャーナリストの道を歩む.民の視点に立って,戦争の英雄神話をうちこわし,国家の圧迫に抗い続けて執筆活動を続ける.邦訳された主著に『アフガン帰還兵の証言』(日本経済新聞社)『戦争は女の顔をしていない』『ボタン穴から見た戦争』(以上,群像社). 松本妙子(まつもと たえこ) 1973年早稲田大学第一文学部露文科卒業.翻訳家.アレクシエービッチの作品では『死に魅入られた人々』(群像社)を翻訳. 目次 孤独な人間の声 見落とされた歴史について――著者自身へのインタビュー 第一章 死者たちの大地 (9人へのインタビュー) 兵士たちの合唱 第二章 万物の霊長 (10人へのインタビュー) 人々の合唱 第三章 悲しみをのりこえて (16人へのインタビュー) 子どもたちの合唱 孤独な人間の声 事故に関する歴史的情報 エピローグに代えて 訳者あとがき 現代文庫版訳者あとがき 解説 広河隆一 |
編集局デスク 小さき人々の声 2015年12月12日 中日新聞 ある若い妻は、無菌テントの中で横たわる夫に付き添おうとして周囲に言われました。「ご主人は人間じゃないの、原子炉なのよ。いっしょに死んじゃうわよ」。それでも彼女は看護師に頼み込み、夜中、テントに入れてもらいました。夫の手を握り「愛しているわ」とささやきました…。 一九八六年のチェルノブイリ原発事故で亡くなった消防士と、その妻の物語です。ベラルーシの女性作家スベトラーナ・アレクシエービッチさんによる『チェルノブイリの祈り』(松本妙子訳、岩波書店)は、被災地の人たちの証言をこまやかにつづっています。消防士の夫を失った妻の、詳細な記憶と愛の言葉に、人間の尊さを感じないではいられません。 アレクシエービッチさんはノンフィクション作品で戦争などに弄(もてあそ)ばれた無名の人々、いわば「小さき人々」の声を掘り起こし、今年のノーベル文学賞を受けました。記念講演では「私は英雄を求めてはいなかった。注目されない目撃者や参加者の物語を通じて、歴史を書いてきた」と語っています。かつて検閲官に「あなたの書く戦争はぞっとする。英雄を登場させてはどうか」と説教されたそうで一貫した姿勢がうかがえます。 英雄の物語は、それ自体は面白く、多くの人がひかれるものでしょう。しかし、英雄譚(たん)の陰には無数の埋もれた人々の物語と声があり、歴史の真実があるはずです。 戦争や原発事故など大きな濁流が生ずれば多くの人が翻弄(ほんろう)されてしまいます。日本でも福島の原発事故があったように、作家の描いてきた物語は決して、よそのことではないのでしょう。 小さき人々の小さな声に、じっと耳を傾け続ける。そういう時代の記録者としての姿勢を教えられた気がします。 (名古屋本社編集局長・臼田信行) |
ノーベル賞 今年の文学賞作家著書、原発事故避難者ら注目 /北海道 毎日新聞2015年12月16日 今年のノーベル文学賞を受賞した作家・ジャーナリストのスベトラーナ・アレクシエービッチ氏(67)=ベラルーシ=の著書「チェルノブイリの祈り」が、東京電力福島第1原発事故の避難者らに注目されている。同著は旧ソ連のチェルノブイリ原発事故(1986年)の被災者らの証言集。関係者は「福島で起きていることと共通している。悲惨な歴史を繰り返さないため、多くの人に読んでほしい」と呼び掛けている。 「チェルノブイリの祈り」は事故から10年後、住民の問題意識や感情がどのように変わってきたかをテーマにした証言集。行政機関から情報が公開されない状況のほか、避難者への差別などが描かれており、98年に邦訳された。 道内の自主避難者らでつくる市民団体「こだまプロジェクト」代表で、福島県伊達市から自主避難している宍戸隆子さん(43)=札幌市厚別区=は「私たちも、何が起きているのか分からない状況を経験し、知人は『放射線がうつる』と差別された。福島で今、現在進行形で起きていることが書かれている」と指摘した。 また、チェルノブイリで発生した健康被害について、宍戸さんは「福島でもチェルノブイリのような被害が出るのではないか。未来の私たちを見ているような気がした」と危惧した。【日下部元美】 |
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