みどりの一期一会

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刑法の原則が覆る怖さ 「共謀罪」閣議決定/「共謀罪」法案 疑問尽きない化粧直し/「共謀罪」法案 説明の矛盾が多過ぎる

2017-03-23 19:05:53 | ほん/新聞/ニュース
衆参の予算委員会での「森友学園」の籠池氏に対する証人喚問の日。
ニュースはこの問題一色で、これはこれで問題なのですが、
同時にすすんでいる「共謀罪」の問題も気になります。

ということで、きょうは「共謀罪」の社説を紹介します。

「森友学園」問題については、各紙の社説が出そろったら
あらためて紹介したいと思います。

 
 社説:刑法の原則が覆る怖さ 「共謀罪」閣議決定
中日新聞 2017年3月22日

 政府が閣議決定した組織犯罪処罰法改正案の本質は「共謀罪」だ。二百七十七もの罪を準備段階で処罰できる。刑事法の原則を覆す法案には反対する。

 盗みを働こうと企(たくら)む二人組がいたとしよう。だが、人間というのは犯罪を共謀したからといって、必ず実行に移すとは限らない。現場を下見に行ったとしても、良心が働いて「やっぱり悪いことだからやめよう」と断念する、そんなことはいくらでもある。

 共謀罪が恐ろしいのは、話し合い合意するだけで罰せられることだ。この二人組の場合は共謀し、下見をした段階で処罰される。そんな法案なのだ。何も盗んではいないのに…。

当局の解釈次第では
 今回の法案では二人以上の計画と準備行為の段階で摘発できる。準備行為とは「資金または物品の手配、関係場所の下見その他」と書いてある。ずいぶん漠然としてはいないか。「その他」の文字が入っているから、捜査当局にどのように解釈されるか分からない心配もある。

 犯行資金をATMで下ろすことが準備行為に該当すると政府は例示するが、お金を引き出すというのはごく日常的な行為である。それが犯罪なのか。どう証明するのか。疑問は尽きない。

 共謀罪の考え方は、日本の刑事法の体系と全く相いれない。日本では既遂を処罰する、これが原則である。心の中で考えただけではむろん犯罪たり得ない。犯罪を実行して初めて処罰される。未遂や予備、陰謀などで処罰するのは、重大事件の例外としてである。

 だから、この法案は刑事法の原則を根本からゆがめる。しかも、二百七十七もの罪に共謀罪をかぶせるというのは、対象犯罪を丸暗記していない限り、何が罰せられ、何が罰せられないか、国民には理解不能になるだろう。

現行法でも締結可能
 この法案は「キメラ」のようでもある。キメラとはギリシャ神話に登場する怪物だ。一つの体に獅子とヤギと蛇が組み合わさった姿をしている。目的である本体は国連のマフィア対策の条約締結だ。その体に「共謀罪」がくっつき、政府が強調する「テロ防止」がくっついている。

 安倍晋三首相は国会答弁で「東京五輪のために必要な法案だ」という趣旨の発言をした。これは明らかな詭弁(きべん)というべきである。そもそも日本はテロに対して無防備ではない。テロ防止に関する十三もの国際条約を日本は締結している。ハイジャック防止条約、人質行為防止条約、爆弾テロ防止条約、テロ資金供与防止条約、核テロリズム防止条約…。同時に国内法も整備している。

 例えば爆発物に関しては脅迫、教唆、扇動、共謀の段階で既に処罰できる。サリンなど化学物質などでも同じである。

 むしろ、政府は当初、「テロ等準備罪」の看板を掲げながら、条文の中にテロの定義も文字もなかった。批判を受けて、あわてて法案の中に「テロリズム集団」という文字を入れ込んだ。本質がテロ対策でない証左といえよう。

 「五輪が開けない」とは国民に対する明白な誤導である。本質は共謀罪の創設なのだ。

 確かに国連の国際組織犯罪防止条約の締約国は百八十七カ国・地域にのぼる。だが、そのために共謀罪を新設した国はノルウェーやブルガリアなどだけだ。むしろ国連は「国内法の基本原則に従って必要な措置をとる」ことを求めている。「共謀罪がなくとも条約の締結は可能だ」とする日弁連の意見に賛同する。

 そもそもこの条約は国境を越えて行われるマフィアの犯罪がターゲットだ。麻薬やマネーロンダリング(資金洗浄)、人身売買などで、テロ対策の条約ではない。少なくともこの条約締結のために、刑事法の大原則を覆してしまうのは本末転倒である。

 危惧するのは、この法案の行く末である。犯罪組織の重大犯罪を取り締まるならともかく、政府は普通の市民団体でも性質を変えた場合には適用するとしている。米軍基地建設の反対運動、反原発運動、政府批判のデモなどが摘発対象にならないか懸念する。

行く末は監視社会か
 専門家によれば、英米法系の国ではかつて、共謀罪が労働組合や市民運動の弾圧に使われたという。市民団体の何かの計画が共謀罪に問われたら…。全員のスマートフォンやパソコンが押収され一網打尽となってしまう。もはや悪夢というべきである。

 実は捜査当局が犯行前の共謀や準備行為を摘発するには国民を監視するしかない。通信傍受や密告が横行しよう。行き着く先は自由が奪われた「監視社会」なのではなかろうか。


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 社説:「共謀罪」法案 疑問尽きない化粧直し
朝日新聞 2017年3月22日
 
 かつて3度廃案になった「共謀罪」を創設する法案が、化粧直しをして組織的犯罪処罰法改正案として閣議決定された。

 先立つ与党審査では、当初案になかった「テロリズム集団」という言葉を条文に書きこむ修正がされた。テロ対策の法案だと世間にアピールするのが狙いで、法的に特段の意味はない。

 化粧直しのポイントは、(1)取り締まる団体を「組織的犯罪集団」に限定する(2)処罰できるのは、重大犯罪を実行するための「準備行為」があった場合に限る(3)対象犯罪を組織的犯罪集団のかかわりが想定される277に絞る――の三つだ。

 だが、いずれにもごまかしや疑問がある。

 旧来の共謀罪についても、政府は「組織的な犯罪集団に限って成立する」と言ってきた。だとすれば(1)は新たな縛りといえない。安倍首相の「今度は限定している。共謀罪との大きな違いだ」との国会答弁は、国民を誤導するものに他ならない。

 (2)の「準備行為」も何をさすのか、はっきりしていない。

 殺人や放火などの重大犯罪には「予備をした者」を罰する規定が既にあるが、これと「準備行為」はどこがどう違うのか。準備行為である以上、犯罪が実際に着手される前に取り押さえることになるが、それまでにどんな捜査が想定されるのか。わかりやすい説明が必要だ。

 共謀罪は組織犯罪防止の国際条約に加わるために必要とされた。そして条約の解釈上、重い刑が科せられる600超の犯罪に一律に導入しないと条件を満たせないというのが、政府の十数年来の主張だった。

 (3)はこれを一転、半減させるというものだ。融通無碍(むげ)、ご都合主義とはこのことだ。

 現時点で政府が「市民生活に影響は及ばない」と説いても、状況次第で法律の解釈適用をいかようにも変えられると、身をもって示しているに等しい。

 そもそも条約をめぐっては、これほど大がかりな立法措置を求めておらず、現行法のままで加盟可能との異論も以前からある。何らかの手当てが必要だとしても、277の罪が妥当かの精査は当然必要となろう。

 条約を締結できないことで、これまでにどんな支障が生じ、締結したらいかなるメリットがあるのか。この点についても、政府から説得力のある具体的な説明はなされていない。

 犯罪が実行されて初めて処罰するという、刑法の原則をゆるがす法案である。テロ対策の名の下、強引に審議を進めるようなことは許されない。


 社説:「共謀罪」法案 説明の矛盾が多過ぎる
毎日新聞 2017年3月22日

 テロ等準備罪を新設する組織犯罪処罰法改正案が閣議決定された。

 政府はかつて「共謀罪」新設の関連法案を3度提出したが、廃案になった。名称を変えた今回の法案も、組織犯罪が計画段階で幅広く処罰可能となる本質は変わらない。

 法整備は、国際組織犯罪防止条約の締結に欠かせないと政府はいう。

 確かに条約締結には意義がある。国際社会が手を結ぶことは必要だ。

 最大の焦点は、締結のためにテロ等準備罪の創設が必要かどうかだ。

 条約は、重大な犯罪の合意(共謀)を処罰できる法整備を締結国に求めている。だが、こうした処罰の規定は人の内心に踏み込む。捜査側の対応次第で国民生活も脅かされる。

 日本の刑法は、犯罪行為に着手した時点で処罰の対象とするのが原則だ。例外的に殺人の予備や内乱の陰謀など重大な犯罪では未遂以前の行為を罰せられる。だが、その数は70程度に限られている。

 今回の法案は従来の原則からかけ離れている。

 条約は各国の国内法の原則に従って法整備することを認めている。ならば現行法で条約締結は可能だというのが民進党など野党の主張だ。

 一方、政府はそれでは締結に不十分だという。政府が国会に提出した資料では、経済協力開発機構(OECD)加盟35カ国のうち、条約締結時に共謀罪などを新設したのは4カ国で、残りはもともとの国内法で対応した。これをどう見るか。

 なぜ法整備が条約締結のための必要条件なのか。法学者ら専門家の見解も分かれる。まずは政府が丁寧に説明し、議論の土台とすべきだ。

 それにしても、これまでの政府の説明には矛盾が目立つ。

 最大のほころびは対象犯罪数だ。条約が法整備を求める4年以上の懲役・禁錮の刑を定める犯罪数は676あり、選別はできないと政府は説明してきた。だが、公明党の意見をいれ、今回の法案では対象犯罪を277に絞り込んだ。これでは過去の説明と整合しない。

 法案の再提出に当たり、唐突にテロ対策の看板を掲げたことも理解できない。条約はマフィアによる犯罪収益の洗浄などへの処罰を目的としたものだ。

 安倍晋三首相が、東京五輪・パラリンピックのテロ対策を理由に「法整備ができなければ開催できないと言っても過言ではない」などと発言するに至っては、まさに首相が批判する印象操作ではないか。

 共謀罪から絞り込んだ要件にも懸念が出ている。組織的犯罪集団に市民が入る余地はないのか、といった点などだ。政府は「共謀罪とは別物だ」との説明を繰り返してきたが、明らかに共謀罪の延長線上にある。


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3月22日(水)のつぶやき

2017-03-23 01:04:56 | 花/美しいもの
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