熟年新米弁理士のひとり言

平成18年に59歳で弁理士試験に合格した企業内弁理士です。弁理士試験、企業での知的財産業務について、気軽にお話します。

成功体験の落とし穴

2012-08-31 08:48:35 | Weblog
シャープが国内の従業員を対象に2000人程度の早期退職者を11月1日から14日まで募集すると発表したそうです。

あの亀山モデルで有名なシャープがリストラとはびっくりしました。

今回の早期退職を含めて国内外で5000人規模の人員削減を行う計画で、海外のテレビ工場売却に伴う上積み分を合わせると、削減規模は最大8500人になる見通しだそうです。

シャープの経営不振の原因は、いろいろ取りざたされていますが、①成功体験が見通しを甘くしたのでは、②技術者の意見が強すぎたのでは・・・と言われています。

私の企業での経験から、この二つの原因に思い当たることがあります。

私が勤務していた企業は、複写機、プリンター等の情報機器の製造販売でトップグループを形成していましたが、アナログからデジタルへの転換が遅れて、一時、業績が低迷していました。

当時の研究開発部門のトップは、いわゆるアナログ技術の成功体験者で、アナログ技術に自信を持っていました。
振り返ってみると、それは過信だったのですが。

したがって、デジタルへの転換を提案する若手マネジャーやグループリーダーの意見を採用することはありませんでした。
結局、業績がかなり低迷して初めて事の重大さに気がついた訳ですが、それでもデジタルへの転換に反対するトップが何名かいました。
最後は、社長の決断で人事異動を行い、デジタルへの転換を決定しました。

この転換の遅れは、成功体験からの脱却の難しさを物語っています。

成功体験は大事ですが、あまり固執すると環境変化に迅速に対応できなくなるという弊害もありますね。

技術者の意見が強すぎると、これも問題になります。

私が研究所のマネジャーを勤めていた頃、新しい画像処理技術を研究していたグループのリーダーが、その技術を新商品の採用しよう営業部門に提案したことがあります。
改善効果はプリントされた画像の状態で確認するのですが、できるだけ定量化しようと、ある計量値を使用していました。

その計量値で評価すると、新しい画像処理技術は、従来のものよりも優れているのですが、その差が格段に大きいとは言えないものでした。

研究リーダーとその上司、研究所長は、盛んに効果を強調するのですが、営業部門のマネジャー達は、プリントされた画像を目視して、その差が少ないという印象を持ったようで、新商品への採用には賛成できないという意見でした。

私は、画像処理技術とは関係の無い研究をしていたのですが、研究所のマネジャーということで、その会議に参加していました。
私がプリントされた画像を比較したところ、営業部門の意見が正しいように思われたので、研究所長に耳打ちして、後日、会議を開いて結論をだそうという進言をしました。
つまり、先送りにしたわけです。

結局、この技術は採用されなかったのですが、計量値を過度に信頼すると本末転倒となるという教訓を得ました。

つまり、計量値は、あくまでもプリント画像の品質を評価する代用特性で、最後はプリント画像で判断するのが正しい方法ですが、自分の研究成果を過信して代用特性での議論に重点を置きすぎたのでしょうね。

シャープのリストラのニュースから考えさせられることが多くありますね。






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