常住坐臥

ブログを始めて10年。
老いと向き合って、皆さまと楽しむ記事を
書き続けます。タイトルも晴耕雨読改め常住坐臥。

甘酒

2013年03月05日 | 日記


もうすぐ94歳になる義母は甘酒を好んで飲む。米麹に酒かすを溶いて煮込んだものだが、これを熱い湯でのばすと、甘く温かい飲み物になる。妻はこれを飲む点滴と言って、身体によいからと、毎日飲めるように常備している。寒い日、昔ながらの寒い家に住む老人には、うれしい飲み物だ。「うまいなあ」一口飲んでつぶやく義母の声を聞くと、こちらも身体が暖まるような気がする。

江戸時代の甘酒は、もち米の粥に麹を混ぜて、とろ火で6,7時間温めて作った。この甘酒を火種のある朱塗り箱のなかの釜に入れて、行商人が天びんで担いで、「あまーい、甘酒ィ」と呼びながら、長屋の前の通りを売り歩いた。アルコール分はないが、寝る前に、腹のなかから暖まる庶民のありがたい飲み物であった。それに代価は6、8文と安価であった。

落語にこんなのがある。
「甘ィ甘酒」
「おう、甘酒屋」
「へいッ」
「どうだ、甘酒屋、あついか」
「へえ、熱うござんす」
「暑けりゃ肌ァ脱いで歩け」
「・・・ヘヘン、ばかにしてやがらア。買うんじゃねえや。ひとをからかってやがらア。何を言ってやンでえ。甘ィ、甘ィ・・・」

餅に赤飯、漬物と年寄りの好みは、伝統食ばかりだ。一日2食だが、しっかりそしておいしく食べるので、寒かったこの冬も乗り切っていけそうである。だが春はきても、日一日と老いを重ねる日々は、後戻りすることなく人生の終焉に向かった進んでいく。何人も、この進行をとどめることはできない。



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