春の野山を歩いていて、日だまりにこの花を見るのはうれしい。こんな可憐な花に、犬のふぐりなどという、らしくない名を付けたのは誰だろう。この花の近くには、フキノトウやノカンゾウなどの新芽が顔を出している。日影には、消え残った雪が黒く汚れをみせているが、春の息吹を少しだけ採って食卓を賑わすのは、一入うれしい気がする。
いぬふぐり星のまたたくごときなり 高浜 虚子
テレビのニュースで東京の桜が開花したことを伝えている。今年は、例年より開花がかなり早い。上野公園では花見の屋台の据付が間に合わず、業者がてんてこまいの様子である。何でも、桜は寒い冬と急な気温上昇による寒暖差が、開花を促すのだという。
落ち葉の中から顔を出す葉ワサビの葉もいとおしい。あと2週間もすると花茎が伸びてくる。その部分を摘んで、三倍酢に漬け込んで食べる。長い冬を耐えてきた身体に生気を吹き込む苦味と辛みがあり、春を告げるすばらしい野菜だ。
フキノトウを刻んでを豆腐汁に入れると、これもまた春の味覚だ。これから出てくる山菜には、どれもきどさがあるが、冬に身体に溜まった毒素消す役目を果たしてくれる。
こんな春の記事を書いていると、北海道の方が猛吹雪を伝えて来られた。先週は吹雪に閉じ込めらて9人もの人が亡くなったばかりだ。そんな冬の只中に、春の花や山菜の記事は、なんだか申し訳がないような気がする。北海道にも早く春が来るのを祈るばかりだ。