万葉集で相聞とは、個人の情を伝え合う歌のことである。男女間のものがその大半を占めている。巻の四の相聞に額田王の歌が入っている。
君待つと 我が恋ひ居れば 我が宿の 簾動かし 秋の風吹く
詞書には「額田王、近江天皇を思ひて作る歌一首」とある。その意は、伊藤博によれば、「あの方のおいでを待って恋い焦がれていると、折りしも家の簾をさやさやと動かして秋の風が吹く」とある。すだれのそよぎにも胸をはずませて人を待つ、恋する女の心の動きをたくみに表現した歌になっている。
額田王は鏡王の娘である。大海人皇子(後の天武天皇)に嫁いで十市皇女を生んだ。しかし天智天皇に召されたことから
あかねさす紫野行き標野行き野守は見ずや君が袖振る 額田王
の相聞歌が兄弟天皇との三角関係を多くの人が想像することとなった。
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