常住坐臥

ブログを始めて10年。
老いと向き合って、皆さまと楽しむ記事を
書き続けます。タイトルも晴耕雨読改め常住坐臥。

柿紅葉

2014年09月10日 | 日記


朝の散歩で紅葉している柿の葉を見つけた。まだ柿の見は青く、葉もほとんどが青い。そんななかに、日当たりのせいか分からないが、紅葉した美しい葉があった。朝夕の気温が下がって、日中との気温差がおおきくなったためであろう。それにしても、自然が作り出す色の美しさにあらためて驚かされる。落葉した柿の葉を集めて、料理の飾りに使った料理屋があったことを思い出す。

あと先に人声遠し柿紅葉 暁台

O・ヘンリーの短編に『最後の一葉』というのがある。ワシントンの「芸術家の村」の住人である若い娘のジョンジーが肺炎に犯された。病状は日々に悪化し、窓から見える蔦の葉を数えながら、その葉がすべて散り終わったとき、自分の命がなくなるときと思い込んでいた。アトリエの共有者の親友はジョンジーの思い込みを忘れさせようと窓のカーテンを閉めるが、ジョンジーは葉を数えることを止めない。窓の外には雪をまじえた北風がひっきりなしに吹きつける。6枚、5枚、4枚。蔦の葉はどんどん少なくなっていく。

そして数日後、葉はとうとう一枚だけになってしまった。ジョンジーは、「最後の一葉ね。この葉がなくなれば私の命もないわ。」そう言って目をつぶった。翌朝、親友が外の風景を見せたくないのでカーテンを閉め切っていたが、ジョンジーはどうしても見ると言う。しかたなくカーテンを開けると、最後の一葉は枝にしがみついて落ちていない。次の日も親友との同じやりとりが続いた。奇跡なのか、最後の一葉はなお落ちていない。その後、数日同じやりとりと結果が続いて、ジョンジーの病は次第に快方に向かい、医師からももう大丈夫と太鼓判をもらった。

親友がジョンジーに告げた。「ねえ、絵描き仲間のベアマンさんが、昨日肺炎で亡くなったのよ。患ってたった二日よ。彼北風の吹く冷たい夜、梯子に登ってあそこの壁に、蔦の葉を描いたのよ。あの葉、風が吹いてもゆれないでしょ。彼が描いてのよ。それが原因で肺炎をわずらったそうよ。」

柿の紅葉を見ながら、『最後の一葉』のストーリーをふと思い出していた。

日記・雑談 ブログランキングへ
コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

中秋の名月

2014年09月10日 | 漢詩


今年の名月はスーパームーンと呼ばれる月が大きく見える現象が起きたらしい。月の出を待ってシャッターチャンスを狙ったが、雲が出て大きい月は取れなかった。雲の間から月が顔をのぞかせたところをパチリ。中秋の名月の雰囲気は少しは感じられるか。

古来、日本人は名月を愛で、中秋の名月ににはススキに団子、里芋や栗などを供えて月見の催しが行われてきた。しかし、この風習が行われたのは、中国から渡来した『白氏文集』の影響を見逃すことはできない。白楽天が宮中にあって満月をみながら、左遷されて遠国に居る友人を思いやる詩「三五夜中新月の色 二千里の外の故人の心」は、日本の『源氏物語』にも引用され、宮殿の貴族たちに愛唱されたきた。

明月を詠んだ漢詩は数多くある。今年は、李白の『子夜呉歌』を鑑賞してみたい。

長安一片月  長安一片の月

万戸擣衣声  万戸衣を擣つの声

秋風吹不尽  秋風吹いて尽きず

総是玉関情  総べて是玉関の情

何日平胡虜  何の日か胡虜を平らげて

良人罷遠征  良人遠征を罷めん

この詩は長安を照らす満月、どの家から聞こえてくる砧の音、吹き止むことのない秋風と三つの秋の風情が詠み込まれている。そして、遠く玉門関へ遠征して胡虜を平らげに行った良人を思いいつの日にこの遠征を終えて帰ってくるのか、という妻の寂しい心を唄っている。


日記・雑談 ブログランキングへ
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする