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遠野物語には山男の話が出てくる。里の女を神隠しのように捕らえるいかにも恐ろしい話だ。この山男の消息を伝えるのは、山に入って鳥獣を撃つ猟師だ。ある年遠野のある長者の娘が、神隠しに会って何年も帰ることがなかった。同じ村に住む猟師が、猟に山に入ると一人の女に会った。山女だととっさに思った猟師は恐ろしくなって、鉄砲を向けて撃とうとした。
女は「あれ、○さんじゃねえけ。撃たんでけれ」と言った。よく見ると村の長者の娘である。そこで、「どうしてこんな処にいるのけ」と聞いた。娘は、山男に捕われ、今はその妻になっているという。「たくさん子を産んだども、みんな夫が食い尽くしてしまった。逃げることはできない。きっと一生ここにいることになると思う。誰にも言うな。お前の身も危ないから早く帰れ。」それを聞いて、猟師は住む場所もよく確かめず、恐ろしさのため逃げ帰った。
寒戸というの若い娘が、梨の木の下に草履を脱ぎ置いたまま行方知れずになった。それから30年も過ぎたころその娘の家に親類縁者が集まって酒盛りをしていた。そこへ、かの女がすっかり老いさらばいて帰ってきた。「どうして帰ってきた」と面々は女に聞いた。女は一言、「皆に逢いたくてだ」そして、また行かなくてはと、行方も告げずに去って行った。その夜は風が烈しく吹く日であった。の人は、風が強い日には、「きょうはサムトの婆が帰ってきそうな日だ」
というのは言いならわしになっているという。
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