弥生は陰暦の3月のことである。2月は如月できさらぎ、着更着、寒いので重ね着する季節という説がある。このでんでいけば、弥生は弥いよいよ、生い茂る、木の葉が芽を出し茂る季節という解釈も成り立ちそうだ。この月は、3月3日が桃の節句で、女の子のいる家では雛飾りでお祝いをする。私事だが。自分の誕生日がすぐである。いよいよ、茂っていた葉が色づいて、朽ちはてる後期高齢者の仲間入りとなる。
しかし、春の訪れは、食べ物の好みにも変化が現れる。甘夏柑の酸味や寿司ご飯が不思議に食べたくなる。在原業平に、恋の歌があるが、王朝人にとっては、春は恋の季節であったらしい。
やよひのついたちより、忍びに人に物らいてのちに
雨のそぼふりけるによみてつかはしける
起きもせずねもせで夜を明かしては春の物とてながめくらしつ 在原業平
物らひては物語らいてを、ぼかして表現したもと物の本には書いている。ながめは長雨と眺めが掛けられている。王朝人が、もの思いに沈んで眺めているようなそぼ降る雨ならよいが、今日は、北海道に発達した低気圧があって、外出もできないような荒れた日だ。故郷の写真がテレビに出てくるのは、そんな吹雪の様子ばかりである。こちらは、多少の積雪だけで、天気は回復に向かっている。