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数日前、季節はずれの雪が降って、梅の花が雪のなかに咲いていた。近所に植えてある梅の花はほとんどが、ピンクの紅梅である。それだけに、雪のなかの花は美しい。我が家の鉢の梅は、紅白に咲き分ける。紅梅はほとんど満開で感動が薄れたころ、白梅が咲きだした。鉢が古くなって、花はまばらにしか咲かないが、よく見ると高貴で愛すべき花である。
しら梅に明る夜ばかりとなりにけり 蕪村
俳人の蕪村は白梅を好んだ。朝の光が少しずつ増してゆくなかで、その輪郭を次第にあらわしていく白梅に惹かれたように思われる。蕪村の晩年に詠んだ句である。奈良時代に、梅は大陸から渡来したが、そのほとんどは白梅であった。鶯が花を慕って飛来するなか、梅を愛でる万葉人の姿があった。
春されば先づ咲く宿の梅の花ひとり見つつや春日暮らさむ (巻5・818)