常住坐臥

ブログを始めて10年。
老いと向き合って、皆さまと楽しむ記事を
書き続けます。タイトルも晴耕雨読改め常住坐臥。

射干の花

2016年04月28日 | 


久しぶりの雨になった。射干の花は、隠花というか、杉林の陽のとどかぬところに群生して咲く。散歩道の蔵王工業の坂道の林に、5月ころ、この花が咲くのを心待ちにしたものだ。霧雨のなかに複雑な紋を持つ花びらに心ひかれる。年とともに、この散歩道にも遠ざかってしまった。そかし、射干は近所のお宅の軒の下の日陰で、今年もその姿を見せてくれた。

くらがりにきてこまやかに射干の雨 川上樹実雄

日当たりのよい斜面には、ワラビが顔をだし、独活が新芽をもたげ、一夜こごみが。林内にはもう鶯の鳴き声も響くようになっているであろう。射干は反対側の、日を遮られた斜面に雨にぬれて咲く。

一本のスモモの木が白い花をつけて
道ばたに曲がっている ウグイスの鳴く方を
みれば深山の桜はもう散っていた
岩にしがみつく青ざめた菫 シャガの花
はむらがって霞のなかにたれていた

西脇順三郎の詩「近代の寓話」だが、射干の咲く風景がみごとに描かれている。自然の風景はそれを読み解く人間の心によって、より深い陰影が加えられる。
コメント
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