ジャガイモの花は懐かしい。生まれ故郷にもしばらく行っていないので、この花をみて故郷を思い出す。昔はジャガイモの花が咲くのは、6月の末の頃であったように思う。広い畑に一面にこの花が咲くと見事であったが、戦後の少量不足の時代には、花が咲き終わって芋が成長するこの方が楽しみであった。お盆近くになって、芋の畝を試し堀して新じゃがを採った。薄い皮がついたままをふかして塩をつけて食べるのが好きであった。
同じ食べ物でもカボチャとジャガイモは大きく異なる。米がほとんどないため、どこの農家でも主食はカボチャであった。学校で友達と握り締めた手を開いて見せあった。手のひらは、カボチャばかり食べていたので、みんな黄色くなっていた。今、畑にカボチャを植えて、収穫して食べるととてもおいしく感じるが、かなり年を取るまでカボチャを食べるのは遠慮していた。おいしいのが、カボチャを見ると、子どものころの貧しい食生活を思い出すからだ。
ジャガイモはインドネシアのジャカトラを経て入ってきたのでこう呼ばれる。ジャガタライモと呼ばれるが、北海道では馬鈴薯と言っていた。
病みぬればじゃがたらの花もいとほしく 松藤 夏山