常住坐臥

ブログを始めて10年。
老いと向き合って、皆さまと楽しむ記事を
書き続けます。タイトルも晴耕雨読改め常住坐臥。

家族

2019年06月05日 | 日記

スマートフォンのラインの機能にグループというのがある。離れて住んでいる娘や孫でグループを作り、「家族」と名付けた。加齢が進むと、老人だけの世帯が増えていく。ラインでつながることで、日々の動向を子や孫と共有して、声掛けもできる。現代の新しい家族の姿なのだろうか。

中原中也に『家族』という小品がある。この家族は、東の空の紫色の雲の中に住んでいる。この家で一番早く目を覚ますのはお婆さんだ。お婆さんは掃除が大好きで、家中の掃除を始める。女中さんもいるが、掃除はけして女中さんにまかせるということはない。そこで女中さんは台所で、竈の下の火を焚き付ける。

お母さんは、鏡台の前で髪を結い始める。次に起きてくるのはお父さん。咳払いをしながら、煙草盆の音を立てると、家中が活気づいてくる。歯を磨き、ご飯を食べて、洋服を着ると、子供は学校へ、お父さんはお役所へ出かける。だが、ここは雲のなか、学校やお役所がどこにあるか誰も知らない。

スマートフォンの中の家族も、どこかこの雲の中の家族と似ているような気がする。「今日は暑くなる。熱中症に気をつけて」と書き込むと、「かしこまりましたぞっ」という孫のスタンプが貼られた。

コメント (2)
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