常住坐臥

ブログを始めて10年。
老いと向き合って、皆さまと楽しむ記事を
書き続けます。タイトルも晴耕雨読改め常住坐臥。

わた雲

2013年06月13日 | 日記


八丈島のあたりに台風が停滞して、太平洋側に局地的な大雨が降っているが、こちらはフェーン現象で朝から28℃を越えている。その影響からか、きのうから青空に浮かぶわた雲がきれいに見える。難しい名では、積雲と呼ばれる。普通500mから3000mの上空に浮かぶ。朝出たものが、夕方に小さくなれば翌日も晴天といわれる。だが、夏にこの雲が発達して、積乱雲になる場合がある。こうなると、雷が発生し、夕立に見舞われる。

畑の水やりは欠かせない。特に苗で植えたブロッコリー、モロヘイヤは根付いたものと太陽の強い光に力尽きて枯れ果てたものも半分ほどある。牛蒡が葉を大きくし始めたので、過密になったところを疎抜きする。疎抜きしたものは、アブラ炒めをすればおいしいと教えられてやってみた。葉はどこかほろ苦いが、15㎝ほどに伸びた根は、すでに牛蒡の味と香りで、なるほどおいしい。こんなものを食べられるのも、野菜作りをしていればこそだ。

ほろ苦い牛蒡の炒め物をほおばりながら、思い出すのは、堀口大学の『夕ぐれの時はよい時』である。

夕ぐれの時はよい時。
かぎりなくやさしいひと時。

それは季節にかかはらぬ、
冬ならば暖炉のかたはら、
夏ならば大樹の木かげ、
それはいつも神秘に満ち、
それはいつも人の心を誘ふ。

親友であった佐藤春夫はこの詩を評して、「甘い、甘い」とけなした。大学は「サトウ、甘いのも味のうちだよ」と警句を吐いた、とものの本に書かれていた。


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清水の次郎長

2013年06月12日 | 日記


明治26年6月12日、侠客清水の次郎長が清水に没した。享年74歳であった。子どものころ、ラジオから流れてくる広沢虎造の浪花節に家族が聞き入っていたのを思い出す。「清水港の名物はお茶の香りに男伊達」。しぶい声が次郎長の活躍のくだりになると子どもながらに興奮したものである。大川橋蔵扮する森の石松も映画になって幾度となく上映された。

なぜ清水の次郎長が世評に高かったのか。維新の政府に道路探索重任を命ぜられて、これに感激した次郎長は公事に従事し死力を尽くしてしばしば功を立てた。明治元年9月、江戸を脱走した幕士が清水港で官軍に殲滅されたとき、死体が港の海に浮いて漂ったがこれを収めるものがなく幾日も放置されていた。次郎長は夜分に子分数名を連れて屍体を集め、ひそかに葬った。官軍のなかにはこの行為を咎めるものがあったが、次郎長はひるむことなく、「死ねば仏、仏には官軍も徳川もない。仏を葬って悪いというなら次郎長はどんな罰でもお受けします」と言って動ずることもなかった。

次郎長は荒地を拓くため、懲役囚数十人を使った。その際とくに願い出て、囚人の手錠や足枷をとり、手足を自由に使って作業を行わせた。前例のないこのやり方に囚人たちは感激して作業を大いに捗ったうえ、一人の逃走者もでなかった。これなど、役人にはとうてい思いのよらない発想であった。

また次郎長が東京で山岡鉄舟に呼ばれて会い、清水への帰路、箱根の坂道を駕籠をやとって下った。駕篭かきは酒手をゆすろうとしてわざと乱暴にかつぎ、危ない目をみせたりした。黙っていると、駕篭かきはわるのりして、何とかかんとかと嘲罵を浴びせる。次郎長はかっとなって刀を抜こうとしたが、刀は鉄舟からの拝領品であった。気をしづめ、駕篭かきのなすまかせて、大いに笑い、果てにはうとうとと眠りかけた。それを見て、駕篭かきはかえった気味がわるくなり、悪態も止めてしまった。三島につくと宿の亭主が出迎え、「次郎長親方お手間をとらせましたな」というので、客が次郎長と知って駕篭かきはぶるぶると震え、地べたに這いつくばって、ひらあやまりにあやまった。

次郎長の武勇伝は、数え切れない。戦後の日本人にもっとも愛された侠客であった。
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茄子

2013年06月11日 | 農作業


きょう、初生りの茄子を一個収穫した。恥ずかしい話だが、茄子の栽培の知識はほとんど持っていない。そこで、畑の隣人に聞いてみた。すると待っていたとばかり、詳しく教えてくれる。「初生りの枝があるでしょう。それが主茎です。そのわずか上に枝があると思いますが、それが副主茎です。私はこの枝を二本仕立てにして育てます。二本以外に伸びてくる枝は切り捨てます。また下の方で雨で土がはねるぐらいの葉はばい菌が入るもとになるのでとり除きます。」そう言いながら、隣人は茄子を支える支柱をしっかりと立てていた。

ズッキーニの黄色の花が畑を彩りはじめ、茄子は紫の高貴な花を咲かせている。勉強不足を反省して、ややどろなわだが茄子について勉強する。長花注花とは花の中央にあるオシベが脇で花粉をもつメシベより長い。これが正常なナスの花だという。花をよく観察して、オシベに比べてメシベが同等だったり、短かったりしているのは、成長に不足があるということだ。原因は水不足、肥料不足、そしてハダニなどの害虫の被害である、と解説している。

「秋茄子は嫁に食わすな」という諺があるくらいおいしいのだが、これにもいままで知らなかった秋茄子の管理法も書いてある。更新剪定を行う、ということだ。夏の日を受けて、茄子は大きな樹勢となるが、この枝を3分の2ぐらいに切りつめる。樹勢を小さくすると同時に根切りをしなければならない。こうした思い切った剪定を行うことで、本当においしい秋茄子が採れるということである。ことしは、この更新剪定に挑戦してみる。
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桜桃

2013年06月10日 | 日記


梅雨の季節であるのに少雨である。6月に入って、畑に雨が降ったのは2回のみ。ふと散歩道にあるサクランボの木に実がピンク色になっていた。季節は確実に進んでいる。

6月10日は時の記念日である。この日が近づくと、桜桃のが熟れはじめ、ピンクや赤の美しく色づきはじめる。時の記念日といっても、一般にはあまり関係もないようだ。なぜこの記念日を知っているかといえば、広告会社に勤めたばかりのころ、「6月10日は時の記念日」というタイトルをつけて、時計屋さんにセールスに行ったからだ。

20歳そこそこの新入社員には、大きい老舗の時計店は相手にしてくれない。新規で店を始めたばかりの若い時計屋さんが、「うちがこの企画に乗ってやる」と心よく賛同してくれた。山形市内の時計屋さんを4軒集める予定であったが、どしても2軒しか集まらない。そこで若いご主人に訳を話すと、「よろしい、うちが3枠とろう」ということで、はじめての企画ができあがり、6月10日の新聞紙面に掲載された。職人気質の気風のいい若主人は、初対面の若者に肩入れをしてくれた。そんな雰囲気が昭和30年代の山形の街角にはあった。

ところで時計といえば、スイスのジュネーブということになるが、なぜここが伝統の時計の町になったのか。記録によると、1449年にはジュネーブには時計職人はたった一人しかいなかった。ところが、宗教改革の嵐のなかで、プロテスタントの移住が起こった。ジュネーブでは、プロテスタントに寛容で門戸を開いていたため、プロテスタントの時計職人が次々と移住してきた。1680年には時計職人の親方が100人になり、従事する職人は300人を超えた。

当時の時計生産は年間5000個であったが、100年後の18世紀末には8万個となり、時計生産の国としてその地位を確立したのである。時の記念日は大正9年に制定されたが、これはスイスとは関係なく、天智天皇が671年の6月10日に始めて水時計を使ったという記録による。



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猫の恩返し

2013年06月09日 | 民話


山仲間のTさんの飼い猫である。玄関のまえで首に紐をつけられておとなしくしている。カメラを向けると「ニャー」と声を出し、カメラ目線になった。Tさんの猫は虎ではないが、お寺の年寄り和尚に飼われていた虎猫の話がある。飼い主の和尚に恩返しをする話だ。寺はもう訪れる人もなく、世間からも忘れられた存在だった。

ある日、猫が急に人間の言葉で、和尚に言った。
「ながい事お世話になったので、なにかお礼をしたい。庄屋の娘が死にそうだ。葬式のときオレがお棺を宙に引き上げるから、和尚さまが、虎ヤー虎ヤーとお経をあげてケロ・・」
まもなく庄屋の娘が死に、庄屋は村中の和尚と法印を集めて葬式を出した。

野辺送りの途中、村はずれの大木の下まで来ると、棺がスルスルと宙に引き上げられて、どうしてもおりてこなくなった。和尚や法印がさかんに読経を続けたが、棺はおりてこなかった。困りきった庄屋は、山の和尚にだけ案内を出さなかった事を思い出した。早速、使いを出して和尚に出向いてもらうことにした。

山の和尚はそこへ来て、もったいぶって
「なむからたんの虎ヤーヤー」
「なむからたんの虎ヤーヤー」とお経をよんだ。すると、棺はスルスルとおりてきて行列を続けることができた。ほかの大勢の和尚や法印は、まがわるそうに一人逃げ二人逃げして、いなくなってしまった。

庄屋は和尚をありがたがり、うやまい尊ぶことかぎりがなかった。山の和尚は、以後、庄屋の仏供で大きな寺を建て、安泰にくらした。
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