明日は鳥海山へ小屋へ泊っての山行。心配された雨も、ピンポイントで晴れ間が覗いている。昨夜、鳥海山のお花畑に咲く花を頭に描きながら就寝した。私は、殆ど夢をみることがない。みても、寝ている内に忘れてしまうようだ。だが、昨夜は妙にはっきりとした夢をみて、そのために起きてしまった。その内容は、仲間の人たちと、山に向かう車のなかだ。何かは分からないのだが、山に登る用品を忘れたことに気づき、取りに戻る。すぐにまた忘れもの気づきまた取りに戻った。同じことを、その車で3度も繰り返した。
夢のなかで何を忘れたかも定かではないが、そのショックで山登りを止めることを決断する。仲間が複数いたのだが、Sさんだけがはっきりしていて、その決断はいい事だと言う。自分は、もう年だし、いつ山を卒業するか迷っていた、などと話をしている。北アルプスの参加を予約していたのでキャンセルしなければと思い、明さんに電話をする。明さんは、意外に冷静で、私の話を受け入れてくれたところで目が覚めた。こんなにはっきりと夢を見たのは、もう何十年ぶりことなどで、妻にも夢の話をする。
最近、ひとつの山に登ると、もうこの山には登れないな、とよく思うんだよ。妻に言うと、「あなた、昔からよく車に忘れ物しているよ。」と妻が言う。言われてみれば、物忘れは若い時からで、高齢になってそのことの不安が高まっているのかも知れない。
河合隼雄の『明恵夢を生きる』を取り出して拾い読みをする。仏僧の明恵は、自分の見た夢を克明に記録し、夢を悟りの境地へ辿るよすがとしている。
夢に云はく、屏風の如き大盤石の尖りを歩みて、石に取り付きて過ぐ。弟子の義林坊、前に過ぐ。成弁(明恵)、又同じく之を過ぐ。糸野の御前は、成弁とかさなりて、手も一つの石に取り付き、足も一つの石の面を踏みて過ぎらる。成弁あまりに危ふく思ひて、能々之を喜びて過ぐ。安穏に之を過ぎ了りて行き、海辺に出づ。
夢の中で明恵は、糸野御前と心を合わせて、大岩の難所を過ぎたのだが、この女性との関係の一端を示している。かつて御前とその子供を難病から救い、御前は明恵に春日明神のご託宣を伝える役割果たしている。