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9月のある日。京都の寺町通のアーケードを歩いていたミモロは、「ギャラリエヤマシタ」という鳩居堂近くのギャラリーの前で、「東北の手仕事」と書かれた看板に、ふと目を止めました。


それは、青森県十和田湖畔で東北6県(青森、秋田、岩手、宮城、山形、福島)の伝統工芸品を扱う「暮らしのクラフト ゆずりは」というお店が企画する展示即売会です。ミモロは、トコトコとお店の中へ。

「もしかして、ここは、東北から来たお店?京都で出会えるなんて感激!」。ミモロは、そう思いながら、店の中へ。
ギャラリー内には、布、バック、着物や帯、鉄瓶、木のお弁当箱など、さまざまな品が陳列されています。ワレモコウなどの山野草やぶどうの蔓が絡まった木が、活けられて、写真で見たことがある東北の山が、ミモロの頭に浮かびます。
まずミモロが、興味惹かれたのは、ぶどうづるの手提げ籠。

「あ、これも、すごくいい感じの色と風合い・・・」ミモロが、次に近づいたのは、やはり岩手で織られた羊毛の織物。へインボーンの模様もしゃれた大振りのストールです。

「わーフワフワでやさしい肌触り」

ミモロは、羊毛の織物に頬ずりして、うっとり。
これはホームスパンによる毛織物。ホームスパンとは、英国生まれの毛織物で、厳選した羊毛を手染めして、手で紡ぎ、手織りで仕上げたものです。岩手には、明治時代に伝えられ、かつては、日本各地で生産されていたましたが、今では、そのほとんどが岩手に。手で紡ぎ、手で織られた毛織物には、空気がいっぱい含まれて、織った人の温もりといっしょに、本当にあたたかに人を包みます。
「ホント、温かーい!羊さんに抱っこされてるみたい・・・・東北の大地の匂いがする・・・」

「これ、なぁに?」次にミモロが触ったのは、曲げわっぱの弁当箱。

木の香りが仄かに漂い、手に持つと、木のぬくもりが伝わってくるよう。使うほどに味わいが出る品です。「こういうお弁当箱に、おむすび入れて出掛けたいね。きっと美味しいよ」とミモロ。
東北は、手の温もりあふれる工芸品の宝庫です。
みなさんお馴染みの南部鉄瓶や茶托。


繭から糸を紡ぎ、染め、織られた紬なども、東北を代表する工芸品です。



「ここにある品は、みんな、すごく温かいね・・・見たり、触ったりしていると、しあわせな気分になる」
「気に入ったものは、見つかりましたか?」と「ゆずりは」の店主、田中陽子さん。
「あのね。どれも、とってもやさしいの。どうして?」とミモロは不思議そうに尋ねます。

青森生まれの田中陽子さんが、十和田湖畔で東北在住の工芸作家さんの品を置くお店「ゆずりは」を始めたのは、もうかれこれ20年前のこと。工芸作家というより、東北の暮らしの中で生まれ、育まれた手仕事を、ひたすら作り続けた方々でした。長く厳しい東北の冬。短い春から秋の時期に集められ、準備された素材を、雪に閉ざされた時間に、ひとつひとつ手で工芸品へと仕上げます。そこは、必ず訪れる春への思いを込めながら。
田中さんが、東北各地を訪ね、出会ったそんな作家さんたちは、200人以上。何度も足を運び、お願いして作っていただいた品ばかりです。作家さんには、ご高齢の方も多く、今、残し、伝えなくてという思いが、田中さんを動かしていたのでしょう。
私も十年ほど前から、何度も東北を訪れました。雄大な自然、大地を包むブナの木々、その美しさは、強く心に残っています。そんな土地で育まれた工芸品は、華美な装飾も、きらびやかさもありません。むしろ飾り気のない武骨な感じ、でも、そこに多くを語らず、ひたすた黙々と生きる、力強さと生命力が伝わってきて、見る人、触れる人の心を打つのです。
京都での企画展を終え、9月28日からは東京で「東北の手仕事展」が行われます。
詳しくは、「ゆずりは」のホームページを。
今、ぜひ、見てほしい企画展のひとつです。
明日は、田中陽子さんに伺ったお話をお伝えします。お楽しみに・・・・。