2月11日に東京芸術劇場で開催されたロレンツォ・ギエルミさんのオルガン・リサイタルを聴きに行ってきました。
チラシによれば、ギエルミさんはルネッサンスとバロック音楽に造詣の深いイタリア人演奏家で、「知的で明るく透明感のある美しい響き、豪壮華麗なパイプの鳴らしっぷり、・・・両手足の超絶技巧による芸術的表現」で名オルガニストといわれているとのこと。「ヨーロッパの教会で鳴り響く音色や空気を運んできてくれるのがギエルミ」と。
プログラムは、J.S.バッハの名曲集ということで、
・前奏曲、ラルゴとフーガ ハ長調 BWV545、529/2
・「装いせよ、おお、愛する魂よ」
・協奏曲 ニ短調 BWV667
・トリオ「主イエス・キリストよ、われらを顧みて」
・「来ませ、造り主なる精霊の神よ」
・協奏曲 イ短調 BWV593
・「いざ来ませ、異邦人の救い主」
・「目覚めよ、と呼ぶ声が聞こえ」
・「心よりわれこがれ望む」
そしてこの日のハイライト
・トッカータとフーガ ニ短調
実は私たちは、2011年にトゥールーズのオルガン・フェスティバルで堪能した教会のオルガンコンサートの雰囲気が懐かしくて聴きにいくことにしたのですが、教会で聞くのとコンサートホールで聞くのとでは、やはり‘音色も空気’も全く別物。宗教の荘厳な色彩が薄れ、華麗・絶妙なテクニックの方が前面に出ている気がして、最初のうちは上手く馴染めませんでした。
でも前半が終って、休憩でスパークリングワインを楽しんだ後は、昔の思い出への拘り、違和感は無くなり、演奏にグングン惹きつけられていき、絶えることのない人間の争いの歴史とその対極に常にある人々の祈り、といった感覚が脳裏を去来し、今の世界情勢とも相まって、私自身も祈りの世界に入っていくような不思議な安堵感を覚えつつ演奏に聞き入りました。
ギエルミさんの演奏も素晴らしかったのだと思いますが、やはり何といってもバッハは偉大だし、パイプオルガンには独特な魅力、不思議な力がありますね。(三女)