
昨日、国立西洋美術館で開催中の「ルーベンス展」を見てきました。
ヨーロッパの美術史を紹介するような展示会ではバロックの時代の代表として必ず顔を出すルーベンスですが、今回は『(スペイン領ネーデルラント・アントウェルペン出身の)ルーベンスを、イタリアとのかかわりに焦点を当てて紹介する』(TBS「ルーベンス展」サイトより)という趣旨で、40点を超えるルーベンスの作品を、『古代彫刻や彼に先行する16世紀のイタリアの芸術家の作品、そして同時代以降のイタリア・バロックの芸術家たちの作品とともに展示』(同上)しています。
上の絵は「I章:ルーベンスの世界」より「クララ・セレーナ・ルーベンスの肖像」。
8人の子供に恵まれたルーベンスが描く幼な子の絵は、あどけなく可愛いらしく、彼の子供に対する愛情が感じられます。この絵の脇の解説文には、「ルーベンスの描く幼子キリストは、多くの聖母子像のキリストと違って子供らしく、可愛い」というようなことが書かれていました。そういえば子供らしくない幼子イエスの絵って結構ありますよね。

アントウェルペン大聖堂の祭壇画「キリスト降架」。これは展示会場に展示されているわけではありませんが、会場で上映されている「大聖堂とルーベンスの絵画を紹介する動画」の中で詳細に紹介されていて、構図の美しさと聖母マリアの涙が印象的でした。テーマ別分類からすると「III章:英雄としての聖人たち」に入ると思います。

「VI章:絵筆の熱狂」より「パエトンの墜落」。『ギリシア神話のパエトーンが太陽神の戦車を暴走させたために、ゼウスの雷を受けて墜落する場面を描い』(ウィキペディア)たものですが、馬や人の激しい動き、黒い雲、雷の閃光などが、ルーベンスらしい色遣いとダイナミックな構図で描かれていて、迫力満点な作品です。それにしても、神話って、これにしても、「IV章:神話の力」で描かれているヘラクレス関連の逸話にしても、どうして荒々しい話が多いのでしょう?

「VII章:寓意と寓意的説話」より「マルスとレア・シルウィア」。古代彫刻から学んだ男性像、女性像は、男性は筋骨隆々のマッチョに、女性はふくよかで優しく美しい姿に描かれています。
平日の午後だったせいか比較的空いていて、各作品をじっくり味わえ、ルーベンスの世界の全体像が何となくつかめたような気がして、納得のひと時でした。



11月最後の日とはいえ、東京は暖かく秋真っ盛り。西洋美術館庭園のロダンの彫刻たちが、秋空と黄葉した木々に映えて、「芸術の秋」を一層感じさせてくれました。(三女)
