小倉遊亀 『故郷の人たち』
作者の父の郷里、大津市南郊外の田上地区の
農家の女たちをえがいている。
この土地独特のものという撒きスカート状の
前掛けをつけ、和む女性四人・・・
(滋賀県立近代美術館名品選:小倉遊亀から抜粋)
この絵の『三幅前垂れ』や『田上手ぬぐい』を
実際に見るために『田上郷土資料館』に
解説ボランティア火曜日班7名で出かけた。
先輩三人は既に個人で来たことがあるというから
解りづらい場所にあるし、ばらばら訪れては
先方も迷惑だろうと新人がまとめて連れて行って
いただいたといった方がいいだろうか。
真光寺というお寺の太鼓堂が
『田上郷土資料館別館』であり、
予約をして資料館の管理をしてらっしゃる
ご住職のおはなし・ご説明をお聞きした。
田上の民具に囲まれ、お話を聞いていると
遊亀が帰省した際、スケッチに出かけるようすや、
実家のトイレの修理の職人にサラサラと絵を描いて
イメージを伝えるようすが、目に見えてくる気がした。
前垂れは上の真ん中のような版木の見本帳で注文して
染めの済んだ糸を買って、わざわざそのための
新品を織っていたという。
(私は古いキモノを解いて作ったと思っていた。)
丁寧なスクラップブックには
制作者と寄贈者の名前があり
「(母の名)が、(娘の名)の嫁入り支度に織ったもの」
と、書き込み。
きもの同様に嫁入りじたくのひとつでもあり、
野良着でもあり、ちょっとした外出着でもあった。
三幅前垂れの汚れや傷みを防ぐため
さらに一幅半の丈の短い前垂れがあったというのも、
頷ける。
これが実物の『三幅前垂れ』。
反物巾×3の巾と、腰からひざ下までの丈
長身のN氏が広げてくれてもこのとおり。
おおきい。
こちらは『田上てぬぐい』。
三分の一が連続柄で、それにときには色を添えた
飛び柄が入るのが特徴。
ところが、遊亀さんの絵にはそれがない。
デザインだけでなく頭に掛けたまま結んで
いないかぶり方もなかったという。
かぶり方は、ひとぞれぞれ工夫して
キチンとアイロンをかけ、角をたてた大原女のように
かぶる人もいれば、結び方もいろいろあって
後ろから見れば、誰が誰だかわかったらしい。
また、女性が集まりで片手懐で
キセルを咥える等という男勝りにも取れる粋な姿も、
この地域では見られなかったという。
絵の見栄え・構成を考えた
遊亀さんの創作であろうとご住職。
お話を聞きしている間中、
ご住職の土地や人々に対する温かい愛情や
小倉遊亀という画家への親近感、加えて
失われつつある文化を大切に思う心を
ひしひし感じた。
そのおかげで、打ち捨てられそうだった
絣くくりに用いられる板締めに使う絣板の
実物を見せていただけて、『染め』に関しても
大変勉強になりました。
ありがとうございました。
それに、先輩・・・
「ここまで来ていろいろ知ったからってね、すぐに
解説に生かせる、解説が変わる、ってわけじゃないんだけどねー。
でも、なんか感じ方が変わるでしょ。どこかかが、変わるのよ。」
そう。よー解らないながら、わたしもそう思います。
でも、個人では思いついても
実行に至らず頓挫していただろうと思います。
感覚の鋭さ・アンテナの高さとフットワークのよさ、
見習いきれないけど・・・
もう少しがんばらないとなぁ。。。わたし。感謝。。。