塩の道 ~「牛方宿」と「前山百体観音」
糸魚川から、松本城下とを結ぶ千国(ちくに)街道は、“塩の道”とも呼ばれている。
深い谷あいの山道を牛方(うしかた)やボッカ(歩荷)の背で塩や海産物を運び、帰り荷は麻や煙草など生活物資を運搬した道だった。
戦国時代、上杉謙信が武田信玄に塩を送った「敵に塩を送る」という『義塩』の故事も、この道に由来する。
雪のない季節、牛方は牛を使って荷物を運んだ。
1頭の牛に塩2俵づつ付け、一人前になると6頭の牛を追い、これを「牛ヒトメエ」(一人前)と呼んだ。
沿道の百姓たちの農繁期の合間に行った「作間稼ぎ」いわゆるアルバイトだった。
山坂が続く千国街道は馬より踏ん張りの利く牛の方が有利だったという。
そんな牛方たちが泊まったのが「牛方宿」である。
街道沿いには旅の安全を祈念したと思われる石仏が多い。
街道に面したウマヤロ。
ウマヤロの牛の様子を見ながら、寝たという中2階の牛方の寝床。
当時の暮らしが息づいている。
(資料写真より)
観音像の表情は素朴で温かいものばかり。
前山百体観音は、西国三十三体、坂東三十三体、秩父三十四体を指すとされ、百番の観音霊場札所になぞらえ、そこにお参りすることで百番札所へ巡拝したものと同じ功徳を得られるとされている。
百体観音は今日も旅人を優しく見守っている。
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