のしてんてんハッピーアート

複雑な心模様も
静かに安らいで眺めてみれば
シンプルなエネルギーの流れだと分かる

セリナの物語23

2007-09-01 | 小説 セリナ(短編)

「いつかこんな日が来ると思っていたの・・・、でもこんなに早く・・・」
「あなたが好きなんだ。ずっと一緒にいたい。きっと幸せにするから・・」
私は脈絡なく言い募った。
「私、しっかりした気持ちであなたの言葉を受け止めたいの」
「あなたのその気持ちで僕は充分なんだよ。それ以上何もいらない」
「お願い、もう少し私に時間をちょうだい・・・」
芹里奈は涙をためた目を向けた。
「どうして泣くの?」
「私・・・」
芹里奈はそれ以上の言葉を詰まらせた。
「分かった・・・今は何も言わなくていいよ」
芹里奈が私以上にこのことを真剣に考えていることに心打たれた。
彼女を苦しめるものが何か知りたかった。しかしそれ以上に頬をつたう涙が哀れでいとおしく思われた。
私は芹里奈の肩に手を伸ばし、そっと体を引き寄せた。彼女の頬が私の胸の中であたたかく柔らかかった。


コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« セリナの物語22 | トップ | セリナの物語24 »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

小説 セリナ(短編)」カテゴリの最新記事