「一緒になってくれないか」
事前にいくつかの気の利いた文句を考えていたが、向き合って口に出た言葉はそんなありきたりのものだった。
その瞬間、私の心を突き刺したものは言葉の問題ではなかった。
芹里奈の顔がその一瞬、苦悩の色に染まったのだ。
それを隠すかのように、俯いてしまった。唐ゆきさんを扱った舞台を観ての帰りだった。
「悪いこと言ったかな・・・」
私は喉をからして、干からびた声をだした。
「ううん、」
芹里奈は顔を上げた。その目がうっすらと濡れていた。
「うれしかったの」
「それじゃいいのか?」
私の心は浮き沈みの落差の大きさに忙しかった。そして芹里奈は言った。
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