輪島市の繁華街を走行中に、損壊した店舗兼住宅で瓦礫の分別をしていたご婦人に手伝いを申し出た。80代の女主が経営する創業70年の呉服屋さんで、高齢で跡取りもいないので再建はあきらめて店仕舞いするとのこと。
被災者の輪島漆器を代行販売して義援金を渡すボランティアをしていると自己紹介したら、災害関連ゴミとして捨てる予定だった大量の塗り箸をいただいた。
ボランティアで中断しているヒスイ加工の創作欲求が抑えがたくなっていたので、「ぷるぷるゆれる勾玉カンザシ」を塗り箸でつくり、売上金の10%を義援金としてお渡しすることを約束。
左が加工前の塗り箸で右が「ぷるぷるゆれる勾玉カンザシ」の加工品。
箸の長さは人差し指と親指をV字にひらいた「ひと咫(アタ)」の1.5倍が適切とされているので、市販の箸の長さは22.5㎝前後が標準。性別や年齢別で食具の長さをかえるのが、身体尺を基準にする日本の文化だ。
しかしこれではカンザシとしては長すぎるので、カンザシ愛用者から聞き取った「長くても18~20㎝が適切」との意見をとりいれて長さ6寸(18㎝強)を常寸にすることにした。モデルは工房に遊びにきた女友達の理恵嬢。
塗の箸の先端をカットした後の処理をどうするかが問題で、箸を塗った塗師への敬意もあり、元からそうであったような自然な加工を心がけて10本ほど試作。
黒紋付が赤や藍に下染めしてから深い漆黒に染めあげるように、黒い箸も赤茶の箸も朱漆が中塗りされていた。これも日本の工芸文化の深み。
箸・橋の語源は離れた端(ハシ)をつなぐモノとする説があるが、箸は食物と身体をつなぎ、橋は陸地を繋ぐ。能舞台の「橋掛かり」はあの世とこの世をつなぐ幽玄世界の演出だ。
そんな意味をこめて塗り箸のカンザシで能登を橋渡しするカンザシが商品開発の経緯で、ボランティアに明け暮れる生活の「箸休め」にこのカンザシつくりました!とテレビインタビューで言ったら、オチがついてる!座布団1枚!とウケてたけど、オンエアされたらウレシイ( ´艸`)
約束のカンザシ!義のカンザシ!災害関連ゴミからよみがえった塗り箸カンザシ!ぷるぷるゆれる勾玉カンザシ!
仕事の収入がなくなった山田も支援してちょうだいw