バックパッカーにも色んな楽しみ方をしているヤツがいる。
俺の場合は、旅先で市場や路地裏の探検、職人のモノつくり現場を観て歩くのが好きだし、それがしたいから旅に出るといってもいいくらい。
映画も好きだから、世界最大の映画市場を持つインドに行くとインド映画も観る。
インド映画で一番好きな女優は、ジュヒー・チャウラー様。
この写真は、インドの路上で買ったブロマイドのコレクションの一つ。
褐色の肌には、バラより蘭が似合います。口角がキュッと上がったところ堪らない!
この写真も路上で買ったブロマイドだが、背景があんまり(笑)。
恐らく撮影所の隅で撮影待ちの間に適当に撮影したんだろうなあと、インド人の大雑把さに思わず笑ってしまう。
文句ない美女には、背景や写真修正ソフトは必要ないでしょ!ってジュヒー様の声が聞こえそうだ。
彼女はオードリー・ヘップバーンを肉感的にした美貌と気品に加え、グラマスな肉体を持つ元ミスインドで、コメディーからシリアスまで役幅も広い。
でも彼女のはまり役はラブコメディーの天真爛漫なお金持ちのお嬢さん役だ。
言い寄る男達を翻弄して、時には肘鉄をピシャリと決める気の強いお嬢様役。
本人もコメディー映画出演が好きなようで、テレビで「コメディーはテクニックじゃないわ!現場で楽しむ雰囲気作りが大事なの」って流暢な英語で答えていた。
役柄のイメージから彼女はB型・サソリ座であろうと踏んでいたが、インドの映画ファンに聞いたら、血液型は不明だがやはりサソリ座とのことであった。
やっぱり!俺は直情径行のオヒツジ座だから、神秘的な雰囲気を持つサソリ座に弱いからよく解るのでR!
インドは広いので、州が違うと売っているブロマイドの種類も変わってくるから、俺のような趣味を持っていると町歩きは宝探しの様相を呈してくる。
肖像権なんか無視して、各地で勝手にブロマイドを作っているのではなかろうか?
集めたジュヒー様のブロマイドの一部。
だからインド人にコレクションのジュヒー様のブロマイドを見せると
「これ持ってな~い!何処で買った?えっ、グジャラート州で買ったって??俺に売ってくれ~!」ということもあって愉しい。
「あんな美女は存在自体が奇跡だね。生きているラクシュミー(インドの女神)だね!」と言うと、「そうだろ!日本にゃあんな美人はいるめい!」とインド男は目をキラキラと輝かせて意気投合するから、俺は買い物する時はよくジュヒー様のブロマイドをちらつかせて値引き交渉を有利に進めていた(笑)。
さて、問題は安宿に帰ってからその日の戦利品・・・ジュヒー様のブロマイドを整理していた時のことだ。
隣のベッドの卒業旅行で初めてインドに来た大学生が、「これどこで買ったんですか?安そうだし嵩張らないからお土産にいいですよねえ?」って聞いてきた。
すると反対のベッドの平田君が「普通に売ってないモノですよね!」と会話に加わった。
平田君は半年かけてインドを旅していた旅慣れたバックパッカーだ。
えっ?あちこちの路上で普通に売ってるじゃないの!と平田君に答えると、「ボク、半年間インドにいて、そんなの見たことないですよ!」と異なことを言う。
二人を宿のすぐ近くの路上のブロマイドを売っている所に案内したら、平田君は「俺は半年間もインドで何を観て歩いてきたんだろう?」とションボリとしていた。
映画スターのブロマイドは、電柱の数ほどあちこちで売られているのだ。
興味が無ければ在っても無いと思い込んでしまうのが面白い。
もっともプロの民俗学者のフィールドワークも似たようなもんで、「日本以外には類例はない!」と断言した報告が誤りであったということも俺は何点か確認している。
在るのに無いとは・・・まるで人生における唯識論的教訓ですなあ、と三人でチャイを飲んだ。