望月歴史資料館の佐藤さんから預かった、先端が欠けた磨製石器はグラインダーの傷も生々しい凄いものだった。
知らない人が見たら、石器に観えない段階で成形も中途半端で終わっているし(笑)
壊れている上に、現代工具の傷が付いているのだけど、本当に私が手を入れて石笛を作っていいもんだか自問自答しながらじっくり観察する・・・ええのんか?ほんまにええのんか?と、少年時代に聴いていたオールナイトニッポンの鶴光の名台詞が頭をよぎる。
先端の刃の部分が鈍角になっているのは、折れた部分を佐藤さんがグラインダーで削ったため。無数の細かい傷は、縄文人が粗い砥石で仕上げた時に付いた傷だと思うが、表面がザラザラに荒れた部分があるのは、石の表面を叩いて成形する敲打法で作られているからだろう。作り方から察すると、縄文時代中期ころまでに作られた磨製石器ではないだろうか?
この磨製石器を作った縄文人は、一体、どれくらいの時間を掛けて作っていたのだろう?
先端が欠けた時は、さぞや気が抜けたろうなあ・・・「あ”~!」って感じで。
私も自作の磨製石器で樹の伐採実験をしていて、折ってしまった事があるから身に沁みる。
そんな事を想いながら作った石笛がこれだあ!
320番で湿式研磨したら傷が消えて、青白い石器が緑になった。敲打痕は残して艶消し仕上げにしたのは、縄文人へのオマージュである。因みに縄文時代の磨製石器なら、刃はもっと鋭角で、このようなハマグリ刃の磨製石器は弥生時代になってからだと思う。
草餅のような鮮やかな色合・・・最初は泥岩かと思ったが、泥岩の仲間の緑色岩だろうか?模様は糸魚川の縄文人が磨製石器を作っていた蛇紋岩に似ているが、蛇紋岩よりかなり柔らかい石だった。吹いてみたら、鈴を転がすような綺麗な倍音が響いた。音域が広くて音色もよいので、プロのライブにも使えるレベル。自分で作っておきながら言うのもなんだが、石笛としては一級品(笑)
縄文人なら喜ぶかなあ・・・少なくとも私は非常に楽しく仕事した。
それにしても、お金を貰ってこんな面白い仕事をさせてくれる人と出逢えて幸せ。