アメリカに移住して結婚するという方に注文を受けたベターハーフ勾玉が、出国ギリギリで間に合ってくれた。
提示された予算に見合う質のよいヒスイ原石が入手できず、かなり焦っていたのだが、今時は入手したくてもできないレベルの原石が手に入った。
万葉歌人が詠った「沼名川の底なる玉 求めて 得し玉かも 拾いて 得し玉かも・・・」と、ヒスイを求めても求められないことを嘆く和歌が、今やヒスイ職人でさえ同じ境遇になりつつある。
厚めに作った勾玉を縦半分にして作るのがベターハーフ勾玉なのだが、その厚みが取れるヒビや石目、角閃石などが入っていない原石となると多くはない。
勾玉を縦半分にする工程でこれまで刃の厚み1㎜の小割機を使っていたが、極上ヒスイなので少しでも無駄にしたくなく、懸案だった刃厚が半分以下の小割機を手持ち工具のリューターで自作。
右側の勾玉に白い斑(ふ)が入っているが、一般的には価値が落ちるとカットされてしまう部分。しかしせっかくの綺麗なヒスイ原石だから、余すところなく縄文風の景色として使いませんか?と提案して、了解して頂いた。
ヒスイの綺麗な部分だけを最上として作品作りをするのではなく、今後は不純物や石目も味わいとする作品作りをしていかないと、近い将来に困ることになると思う。
私にとって、昨今のヒスイ人気は有難くも心配の種でもある。