30年来の付き合いのある浅草の三社祭りの仲間から、爺さんの形見という煙草入れの根付交換のご注文。
私と同じ江戸趣味の男だから、江戸の火消し纏(まとい)をモチーフに趣向を凝らすこと半年あまり・・・。
纏とは江戸時代の火消し鳶が、火事の最戦線の屋根の上で「ここから先の家を倒壊させて火を防げ」という目安に振った道具で、通常は火の粉除けための和紙の短冊状をしたバレンが付き、火消しの威信をかけた旗印のようなもの。
鳶のだれでもが纏を持てる訳でなく、各火消し組の兄いと呼ばれる豪胆で目端が利き、火事場を仕切る器量のある纏持ちだけに許される火消しの花形。
家族と言えども迂闊に纏に触ろうものなら、どやされたというくらいに大事にされたもの。
幕張の増田君だから「ま」の字の線刻は外せないし、彼の地元の祭り半纏の背中には「ま」の字が意匠されているので一石二鳥。
ヒスイ製の枡形に十字を線刻して田の字で「マスダ」と洒落てみた。
薬石の玉はケシの実を意味しており、丸い玉と四角い枡形を組み合わせた「消しマス」という洒落で、実在する纏をモデルにしている。
江戸っ子は駄洒落落ちが好きなのだ。
野暮と粋の差は一歩引いた諧謔の有無で、これが江戸っぽくなるかどうかの分かれ目。
わっかるかな~・・・わからないヤロウは野暮天ということになっている(笑)