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前回記事に引き続き山形県肘折温泉の周辺を巡ります。今回は温泉ファンでしたら名前を知っているであろう有名野天風呂「石抱温泉」を取り上げます。まずは「石抱温泉」を管理している肘折温泉街の旅館「ゑびす屋」を訪ってこのお風呂に入りたい旨を告げ、宿の方から現地までの行き方を記した地図を入手します。
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銅山川を遡りつつ、地図に従って所々で右へ左へ曲がりながら、雨上がりで随所に水たまりができている凸凹だらけの未舗装路を進んでゆくと、その狭隘な道の突き当たりで俄然視界がひらけ、「石抱温泉」と彫られた石が目に入ってきます。温泉街から約10分ほどでしょうか。
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その石の横に広がる駐車スペースで車をとめ、その先に伸びる杣道を歩いてゆくと・・・
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100メートルも歩かないうちに、目的の野天風呂にたどり着きました。傍らには天明年間のものと思われる薬師如来の石碑が祀られています。出羽三山の山中ですから、信仰を求めて杣道を歩く人々を、この仏様は見守ってきたに違いありません。
とはいえ、あまりに簡単に到達できてしまい、ちょっと拍子抜け。とてもワイルドなロケーションですから秘湯といえば確かに秘湯なのですが、車があれば意外とイージーにたどり着けてしまうため、いわゆる秘湯と称されるものを巡っているようなマニアにとっては、秘湯でも序の口か序二段あたりの格付けになるのかもしれません。もしあなたが「石抱温泉に行った」と温泉ファンに話した時、「あぁ、あそこね。秘湯とはいえないな」なんて上から目線で語ってくる人がいたら、その人はきっと私のような面倒臭いマニアに違いありません。軽蔑の眼差しを向けながら心の中で石を投げつけてやりましょう。
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山中の草叢の中、石を組んでお湯をせき止めているだけの、至ってシンプルな浴槽です。私が訪れた日はあいにくの天気が続いていたため、湯船の周囲はちょっとした泥濘と化し、お湯の中にも落ち葉や小枝などが浮いていましたが、湯船に関しては手でささっと除去することで、入浴するには差し支えないような状態になりました。
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お湯は山からの流れ込みの他、浴槽底の岩盤の割れ目からも湧き上がっており、常にプクプクと気泡が上がっていました。つまり湧き立てのお湯に入れるわけです。請け売りですが、石抱という風変わりなネーミングは、お湯に含まれる炭酸の量が異常に多くて体がぷかっと浮いてしまうため、石を抱いて入浴したという事に由来しているんだとか。私が入浴した感じですとそんなに浮くような感覚はなく、さすがにその逸話は眉唾物ではないかと思ってしまいましたが、とはいえ、岩盤の表面にこびりついているコケに気泡がたくさんついている他(光合成による気泡も含まれているのかも)、私が実際に入浴すると肌に気泡が付着しましたから、決して完全なるフィクションではないようです。
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グリーンを帯びた山吹色に濁るこの湯は、肘折のお湯に似たタイプ。この時の湯温は34.3℃でした。繰り返しますが前日まで雨が続いていたため、その影響で温度が低下していたのかもしれません。正直なところ全身浴をするにはぬるかったのですが、一度肩まで浸かってしまえば、もうこっちのもの。体がお湯に慣れてゆくので、ぬるさを気にせず湯浴みが楽しめました・・・と申し上げたいところなのですが、草叢に囲まれ、且つジメジメとしており、しかもお湯から炭酸ガスが放出されている環境ですから、湯船の周りには藪蚊や虻のようなブンブン飛び回る吸血性の忌まわしい虫だらけ。まだ湯船に入る前の、辺りの様子を伺っている時点から、すでに服の上から奴らは刺してきやがります。そして、私が入浴のために服を脱ごうものなら、奴らは狂喜乱舞で猛攻撃を仕掛けてくる始末。はじめのうちは正々堂々と戦うつもりでしたが、四方八方から攻撃を仕掛けてくる奴らに歯が立たず、湯船にちょっと浸かるだけで白旗をあげざるを得ませんでした。この秘湯は虫対策ができる人向けであり、玄人好みするという意味では、たしかに秘湯なのかもしれません。とはいえ、なかなか面白いお風呂でした。話題作りにはいいかもしれません。いや、虫に刺されて体の一部が腫れること必至ですから、ヒアルロン酸注射が高くてお困りの方は、こちらへ行って蚊に刺されて顔を部分的に盛り上げてみても良いかもしれませんね(なんて)。
分析書なし
山形県最上郡大蔵村
冬季アクセス不可
無料ですが利用前には肘折温泉の旅館「ゑびす屋」に声をかけること
私の好み:★★
入浴