温泉逍遥

思いつきで巡った各地の温泉(主に日帰り温泉)を写真と共に紹介します。取り上げるのは原則的に源泉掛け流しの温泉です。

黄金温泉 カルデラ温泉館

2018年03月23日 | 山形県
 
前回記事に引き続き山形県黄金温泉を巡ります。前回記事の「金生館」は鄙び風情が漂う渋い旅館でしたが、温泉地を貫く一本道の突き当たりには、それと対極を為すような立派な温泉入浴施設「カルデラ温泉館」が営業しています。私個人としては約10年ぶりに再訪することにしました。建物自体は現代的ですが、そのファサードは伝統的な農村建築をイメージしているものと思われます。


 
決して大きなわけではないのですが、場違いなほど綺麗で立派。敷地にはお庭まであり、その端っこには源泉と思しき設備が立っていて、そこから湯気を上げながら熱いお湯が迸っていました。


 
玄関を入って券売機で湯銭を支払い、券を受け付けに差出し、食堂を左に見ながら廊下を奥へと進みます。廊下の途中には露天風呂へ出るドアがあるのですが、1つしかないため男女入れ替え制であり、しかも私が訪問した時間帯は既に露天風呂の開放が終了していたため、今回は利用できませんでした。なお露天風呂の男女時間割については公式サイトでご確認を。


 
廊下の突き当たり正面に、薄暗い中で神々しい存在感を放つ炭酸泉の飲泉場が設けられ、その両側に男女両浴室の入口が配置されています。これだけ堂々とした構えでお風呂の入り口を左右に侍らせているのですから、余程飲泉に誇りを持っているのでしょう。備え付けの柄杓で実際に飲んでみますと、まず非常に冷たい感覚が全身をシャキンと刺激します。冷蔵庫ではなく天然でこれだけ冷えるのですから驚きです。そして淡い金気の味と炭酸のシュワシュワ感が口腔の中に広がります。決して美味しいものではありませんが、いかにもミネラルたっぷりといった感が強く、良薬口に苦しと自分に言い聞かせながら飲むと、それだけで健康になれそうな気がします。日本では温泉や鉱泉を入ることばかりに関心が向きがちですが、海外では飲んで健康に役立てている文化も多く、国内でももっとこのような利用方法がフューチャーされて良いはず。なかなか良い試みですね。

ちなみにこの炭酸泉の分析書によれば、溶存物質は89.7mg/kgですが成分総計になると971.3mg/kgと一気に10倍以上の数値に跳ね上がります。一般的な温泉では両者にここまでの差は見られないのですが、これは冷鉱泉の中に炭酸ガスが881.6mgも含まれているためです。温泉の場合は温かいためガスが飛んでしまうのですが、冷鉱泉ならばガスも液体中に潜んでいられるのですね。


 
八角堂のような建物の下が更衣室。オープンして結構な年月が経っているはずですが、落ち着いた雰囲気の室内はとても綺麗で、利用にストレスを感じることがありません。


 
ダークチーク調のシックな趣きで、ゆったり寛げる佇まいの浴室。更衣室同様に手入れが行き届いています。木材が多用され、床には十和田石を採用。見た目のみならず実際に触れた感触も上質。気持ち良く湯浴みを楽しむことができました。
洗い場にはシャワー付きカランが5基取り付けられています。


 
浴室内には槽が二つあり、うち一つは先程の飲泉場に注がれていた冷たい炭酸泉です。槽といっても全身浴ではなく足湯用であり、腰掛けに座って足を冷鉱泉の中に入れるのですが、あまりに冷たいためジッとしていられず、私は10~15秒が限界でした。この冷たい足湯ならぬ足冷泉と交互に入ると良いのが・・・


 

ちょっと熱めにセッティングされている主浴槽です。湯口から直に触れないほど熱い温泉が浴槽へ注がれており、熱いお風呂に慣れている私でも初めのうちはたじろいでしまいましたが、しっかり掻き混ぜることにより、加水を経ないで全身浴することができました。湯船のお湯は淡いウグイス色を帯びているように見えますが、これは浴槽の材質が影響しているものと推測され、実際には山吹色の微濁ではないかと思われます。底面が目視できるほどの透明度を有しており、お湯を口に含むと薄い塩味と弱い金気味、炭酸味、土類感、そして少々の石膏臭を感じ取ることができました。湯中ではスルスベの中に少々の引っかかりがあり、熱いながらもしっかりと肌に馴染んでくれます。館内表示によれば、温度調整のため加水しているものの、循環などの無い掛け流しとのこと。その言葉に嘘偽りは無いでしょう。湯口からの投入量と同量のお湯が浴槽縁の切り欠けから溢れ出ていました。なお炭酸が含まれているお湯とはいえ、湯中における泡付きはありません。なお泉質名こそ「ナトリウム-塩化物温泉」ですが、実際には炭酸水素塩泉として性格も有しており、お湯としては肘折に近いタイプと言えそうです。

私は熱い湯船で火照った後に、すぐ冷たい炭酸泉へ足を入れてクールダウン、そしてまた熱い湯船へ・・・というサイクルを繰り返して、当地の大地の恵みを堪能させていただきました。もちろん飲泉もしておりますので、まさに全身で鉱泉や温泉の恵みを享受したわけです。綺麗で使い勝手もまずまず、しかもお湯も良く、主張が強くてキンキンに冷たい炭酸の冷鉱泉まであるという、実に素晴らしい施設でした。

良い施設であるにもかかわらず、私が訪れた時は私以外にお客さんがおらず閑散としていました。奥まった場所ですから、集客力に欠けるのかもしれませんが、それにしては非常にもったいない。肘折エリアを含めた当地で気軽に日帰り入浴をしたければ、第一選択の候補として相応しい施設であると私は断言できます。


黄金温泉組合7号源泉
ナトリウム-塩化物温泉 54.0℃ pH6.0 掘削動力揚湯 溶存物質2275mg/kg 成分総計2849mg/kg
Na+:625.6mg(80.88mval%), Ca++:60.9mg(9.04mval%), Mg++:14.6mg, Fe++:1.7mg,
Cl-:861.5mg(75.00mval%), Br-:1.8mg, SO4--:86.8mg, HCO3-:381.2mg(19.29mval%),
H2SiO3:118.5mg, HBO2:44.1mg, CO2:573.0mg, H2S:0.4mg,
(平成19年3月23日)
加水あり
加温・循環・消毒なし(ただし清掃時のみ塩素系薬剤使用)

炭酸泉源泉
単純冷鉱泉(二酸化炭素型) 9.4℃ pH4.4 自然湧出 溶存物質89.7mg/kg 成分総計971.3mg/kg
Na+:6.6mg(42.65mval%), Mg++:2.6mg(30.88mval%), Ca++:2.8mg(20.59mval%),
Cl-:6.0mg(28.33mval%), SO4--:11.4mg(40.00mval%), HCO3-:11.8mg(31.67mval%),
H2SiO3:46.3mg, CO2:881.6mg,
(平成25年11月20日)

山形県最上郡大蔵村南山2127-79
0233-76-2622
ホームページ

4月~10月→9:30~18:30(受付18:00まで)、11月~3月→10:00~16:30(受付16:00まで)、第1・第3火曜定休
露天風呂の男女時間割については公式サイトでご確認を。
450円
ロッカー・シャンプー類・ドライヤーあり

私の好み:★★★
コメント
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