嘗ての私のボスは、母親を難病で亡くしていて、当時の医療制度や病院の体質に対する強い疑問や反発が政治家になる動機になったと語っていました。
そういう背景もあるし、臓器移植法案「脳死は人の死」には、大賛成の立場でした。
議員の一票一票でで人の死を定義する法案が成立するか否かが決まるのです。
法案成立に賛成や反対する個人や団体からの陳情は、ボスのところにも連日寄せられていました。
特に彼を深く悩ませたのは、反対する陳情団。
「反対」に票を投じるということは、新たな臓器移植の道を閉ざすこと。その狭間で思い悩み、友人の医療系出身の議員とも、「自分は賛成だけれど、どうやら世論は脳死をまだ受け入れる段階ではないようだ。もしも反対に投じたとしたら、臓器移植へのどんな突破口が見出せるのか、その可能性は残されるのか」何日も議論を重ねたようです。
そして、彼は、投票の当日、反対の札を投じました。
この瞬間まで、私達スタッフは、彼がどういう選択をするのか、誰も知りませんでした。
秘書室のモニターで議場の投票中継をみて、私も感銘をうけました。
自分は賛成なのに。それでも、多くの世論や、脳死臨調での議論を踏まえ、「脳死を人の死と定めなくても臓器移植への道を開く法を整備することができるのなら」と。彼にとっては、重い重い選択だったようです。
前日は、一睡もできなかったそうです。
けれども、過半数の賛成で、この法案は衆議院を通過しました。
そして、参議院で否決。差し戻しとなり、結局現在のようなかたちになったのです。つまり、
死体とは脳死した者の身体を含む。さらに「脳死した者の身体」とは、その身体から移植術に使用されるための臓器が摘出されることとなる者であって脳幹を含む全脳の機能が不可逆的に停止するに至ったと判定されたものの身体。(臓器の移植に関する法律第六条より)
ややこしいですね。簡単にいうと、臓器移植が行われることになった脳死状態の身体に限って「死体」とみなす…ということです。
(つづく)
そういう背景もあるし、臓器移植法案「脳死は人の死」には、大賛成の立場でした。
議員の一票一票でで人の死を定義する法案が成立するか否かが決まるのです。
法案成立に賛成や反対する個人や団体からの陳情は、ボスのところにも連日寄せられていました。
特に彼を深く悩ませたのは、反対する陳情団。
「反対」に票を投じるということは、新たな臓器移植の道を閉ざすこと。その狭間で思い悩み、友人の医療系出身の議員とも、「自分は賛成だけれど、どうやら世論は脳死をまだ受け入れる段階ではないようだ。もしも反対に投じたとしたら、臓器移植へのどんな突破口が見出せるのか、その可能性は残されるのか」何日も議論を重ねたようです。
そして、彼は、投票の当日、反対の札を投じました。
この瞬間まで、私達スタッフは、彼がどういう選択をするのか、誰も知りませんでした。
秘書室のモニターで議場の投票中継をみて、私も感銘をうけました。
自分は賛成なのに。それでも、多くの世論や、脳死臨調での議論を踏まえ、「脳死を人の死と定めなくても臓器移植への道を開く法を整備することができるのなら」と。彼にとっては、重い重い選択だったようです。
前日は、一睡もできなかったそうです。
けれども、過半数の賛成で、この法案は衆議院を通過しました。
そして、参議院で否決。差し戻しとなり、結局現在のようなかたちになったのです。つまり、
死体とは脳死した者の身体を含む。さらに「脳死した者の身体」とは、その身体から移植術に使用されるための臓器が摘出されることとなる者であって脳幹を含む全脳の機能が不可逆的に停止するに至ったと判定されたものの身体。(臓器の移植に関する法律第六条より)
ややこしいですね。簡単にいうと、臓器移植が行われることになった脳死状態の身体に限って「死体」とみなす…ということです。
(つづく)