経済なんでも研究会

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似て非なる 2つの物価高

2022-02-15 07:49:50 | 物価
◇ 景気動向が全く異なる日本とアメリカ = 先週10日、アメリカ労働省は1月の消費者物価を発表した。それによると、物価は前年比7.5%の上昇。なんと1982年2月以来40年ぶりの高さとなった。景気回復に伴う需要の増加、エネルギー価格の高騰、供給網に生じたネック、人手不足による賃金上昇など、原因は複雑多岐。FRBは金融引き締めを急ぐだろうという観測が広がり、株価は大幅に下落した。

同じ10日、日銀は1月の企業物価を発表した。それによると、物価は前年比8.6%の上昇。1985年9月以来36年ぶりの高さとなった。エネルギーや原材料の高騰、それに円安の影響が加わった。企業物価というのは、企業同士が取引したモノの値段。木材・木製品が58.5%、石油・石炭製品が34.3%、電力・ガス・水道が22.9%も上昇している。

この2つの物価動向は、一見するとよく似ている。いずれも数十年ぶりの上昇率。原油価格の高騰が引き金になった。コロナで人手不足が著しい。こうした点は、日米の物価に共通している。だが基本的に異なる点は、アメリカはモノが流れる最終段階の消費者物価であり、日本の企業物価は流れの始まりを捉えた企業段階の物価であることだ。

奇妙なことに、アメリカの卸売り物価は昨年12月で0.2%の上昇。日本の消費者物価は、昨年12月で生鮮食品を除けば0.5%しか上昇していない。なぜなのか。アメリカの場合は、景気が上向きで消費需要が強いためだと考えられる。日本の場合は、景気が悪く需要が弱いため企業段階の物価上昇を小売り段階に転嫁できないためである。

        ≪14日の日経平均 = 下げ -616.49円≫

        ≪15日の日経平均は? 予想 = 上げ≫

今週のポイント

2022-02-14 07:58:17 | 株価
◇ 怖い3月が近づいてきた = ダウ平均は先週352ドルの値下がり。終り値は3万5000ドルを割り込んだ。週の前半はオミクロンの拡大が頭打ちとなり、経済の正常化への期待が高まったことから買い。後半は1月の消費者物価が7.5%も上昇したことから、大きく売られた。いよいよ3月が近づき、FRBの厳しい引き締め政策が意識されている。セントルイス連銀のブラート総裁が「7月までに1%の利上げを」と語ったことも、市場の空気を冷やした。

日経平均は先週256円の値上がり。金曜日が休日だったため、アメリカの物価上昇は影響していない。2週連続の上昇となったが、まだ2万8000円には届かなかった。この2週間は、ずっと2万7000円台での上下動。要するに、2万6000円台に近付くと買われ、2万8000円台に接近すると売られる展開となっている。

FRBの金融引き締めが市場に及ぼす影響は、心理的なものにとどまらない。すでに長期金利は2%を超え、現実的に株式市場に影響を及ぼし始めている。さらにウクライナ情勢が悪化し、原油の国際価格は1バレル=93ドルに達した。市場を取り巻く環境は、決して芳しくない。日経平均もニューヨークの流れを受けて、今週は下げの局面からスタートすることになるだろう。

今週は15日に、10-12月期のGDP速報。16日に、12月の第3次産業活動指数。17日に、1月の貿易統計、12月の機械受注。18日に、1月の消費者物価。アメリカでは15日に、1月の生産者物価。16日に、1月の小売り売上高と工業生産、2月のNAHB住宅市場指数。17日に、1月の住宅着工戸数。18日に、1月の中古住宅販売。また中国が16日に、1月の消費者物価と生産者物価を発表する。

        ≪14日の日経平均は? 予想 = 下げ≫

死者が語る コロナ肺炎の危険度 (99)

2022-02-12 07:52:34 | なし
◇ 世界の感染者は4億人を超す = 世界の感染者は累計4億0322万人。この1週間で1831万人増加し、とうとう4億人を超えた。2億人から3億人に増加するまでには5か月半かかったが、それから4億人になるまでは4週間しかかかっていない。ただ増加数は前週より400万人も減っている。死亡者は577万7230人で、7万6225人の増加。前週より2100人ほど増えている。こうした数値から、専門家の間では「世界的にみると、オミクロンはピークを超えた」という見方も強まってきた。

アメリカの感染者は7727万人。この1週間で159万人増えたが、この増加数は前週より118万人少なかった。このため行動規制を解除した州も少なくない。死亡者は91万2255人、この1週間で1万7938人増加した。国別の死亡者をみると、ブラジルが63万人台、インドが50万人台、ロシアが33万人台、メキシコが31万人台。あとはイギリスが15万人台、イタリアとインドネシアが14万人台、フランスとイランが13万人台となっている。

日本の感染者は累計368万2064人、この1週間で65万7156人増えた。この増加数は前週を7万人上回っている。死亡者は1万9942人で、886人の増加だった。前週の2倍以上に増えており、1日の死亡者数も第5波の最大値を超えている。政府は36都道府県に「まん延防止措置」を発令した。

アメリカやヨーロッパ諸国、それにフィリピンなどの東南アジア諸国も、オミクロンはピークを過ぎたとみて、次々と行動規制を緩和し始めた。こうした諸国からみると、日本のコロナ情勢は「まだ悪化している」と映るようだ。たとえばアメリカの国務省は7日、日本への渡航警戒レベルを最高度の4に引き上げ、アメリカ国民に渡航中止を勧告した。なんとも残念である。 


インフレ対策は 不要なのか? (下)

2022-02-10 07:53:20 | 物価
◇ 日銀は「物価高は一時的」と知らん顔 = 電気・ガス料金からガソリン代、小麦やバターなどの食料品、それに衣料品からタイヤまで。昨年暮れからことしにかけて、世は正に値上げラッシュ。原因は原油価格の高騰、供給ネックなどさまざまだが、特に日本の場合は円安の影響も大きい。エネルギーはもちろん、機械部品や食料品などの多くを輸入に頼っているためである。

ところが総務省が発表した昨年12月の消費者物価指数をみると、生鮮食品を除いた総合指数は前年比0.5%しか上昇していない。その理由は、まず昨年秋までは物価が下がっていたこと。また家事用品や通信機器が大幅に下落していることに求められる。特に携帯電話の通信料が大きく下がったことが響いた。この通信料値下げの影響が消える4月以降、総合指数は2%前後の上昇になると試算されている。

家事用品や通信機器の値下げは、100円―1000円単位になることが多い。その一方、食料品の値上げはせいぜい10円単位。だが消費者の感覚では、その方がきつい。そのうえ現状から判断すると、原油価格はまだ上昇しそうだ。コンテナ不足による供給ネックの解消も時間がかかる。世界のインフレはさらに進行し、それが日本にも伝染する。円安が進めば、なおさらである。

しかし日銀は「いまの物価高は一時的な現象」という姿勢を崩さない。黒田総裁は「円安は基本的にプラス効果の方が大きい」と断言する。このため世界各国がインフレを警戒し、金融を引き締める方向に走り出したなかで、日本だけが金融緩和を守り通す形になってしまった。だが、これでいいのか。またまた対応が遅れて、国民がインフレに苦しむことにならないのだろうか。

        ≪10日の日経平均 = 上げ +116.21円≫

        【今週の日経平均予想 = 4勝0敗】  

インフレ対策は 不要なのか? (上)

2022-02-09 08:17:00 | 物価
◇ 世界各国は金融引き締めへ = 世界中でインフレが進行している。その原因は複雑多岐。たとえば原油や資源の値上がり、コロナによる人手不足、供給面のネック、景気の回復、異常気象、ウクライナ情勢・・・。それだけに今回のインフレは長期化する可能性が大きい。このため各国の政府・中央銀行は、一斉に金融政策のカジを引き締めの方向に切り始めた。

アメリカでは昨年12月の消費者物価が前年比7.0%、実に39年半ぶりの高い上昇となった。ガソリン価格は前年より5割以上も高く、国民の不満はバイデン政権の支持率低下となって表われている。人手不足で1月の平均時給は前年比5.7%も上昇、賃金インフレの様相も濃くなってきた。このためFRBは3月に政策金利を引き上げることを決定、量的引き締めも実行して市中の資金を吸収し始める。

ヨーロッパもインフレ対策に動こうとしている。ユーロ圏の消費者物価は1月に前年比5.1%上昇、過去最大の上げ幅となった。エネルギー価格は28.6%も上昇している。ECB(ヨーロッパ中央銀行)は3月から、コロナ対策として実施してきた量的緩和を停止する。市場では、利上げも織り込み始めた。EUを離脱したイギリスは昨年12月に続いて、この2月に2回目の利上げを断行している。

新興国の多くは自国通貨の下落を防ぐため、政策金利を引き上げている。たとえばブラジルは何度も引き上げ、現在の金利は10.75%になった。中国は景気を下支えするため利下げしたが、それでも不動産バブルを抑えるため厳しい融資規制をしている。トルコは国内インフレにもかかわらず利下げしているが、これはエルドアン大統領の指示。理由は判らない。そうした世界情勢のなかで、全く動かない国。それが日本・・・。

                     (続きは明日)

        ≪8日の日経平均 = 上げ +35.65円≫

        ≪9日の日経平均は? 予想 = 上げ≫

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