経済なんでも研究会

激動する経済を斬新な視点で斬るブログ。学生さんの就職準備に最適、若手の営業マンが読めば、周囲の人と差が付きます。

物価上昇2%の 衝撃 (上)

2022-05-25 08:05:47 | 物価
◇ 価格転嫁が進まない日本 = 総務省が20日発表した4月の消費者物価は、前年比2.1%の上昇だった。上昇幅が2%を上回ったのは、消費税が8%に引き上げられた15年7月以来7年10か月ぶりのこと。生鮮食品を除く552品目中351品目が上昇した。特にエネルギーと食料品の値上がりが目立つ。たとえば電気料金は21.0%、ガソリンは15.7%、食用油は31.5%の上昇だった。

日銀が16日発表した4月の企業物価は、前年比10.0%の上昇だった。2ケタの上昇は41年ぶりのこと。ウクライナ戦争の影響で、エネルギーと資源の価格が大幅に上昇した。たとえば石油・石炭は前年比30.9%、鉄鋼は25.0%、木材・木製品は56.4%、飲食料品は3.7%上昇している。744品目中533品目が値上がりした。企業物価というのは、企業間で取引されるモノの値段。企業段階でみる限り、インフレ状態だと言っていい。

この2つの物価統計をみてすぐ判るのは、両者の上昇率が大きくかけ離れていること。この上昇率の差を、物価ギャップと呼んでいる。本来なら企業段階で物価が上がれば、小売り段階の物価も上がる。ところが3月の物価ギャップは8.5ポイント、4月も7.9ポイントと広がったまま。これは小売り段階での需要が弱く、いわゆる価格転嫁がなかなか進まないことを表している。

欧米諸国の場合は、価格転嫁が順調に進んでいる。たとえばアメリカをみると、4月の生産者物価は11.0%の上昇、消費者物価は8.3%の上昇で、物価ギャップは2.7ポイントだった。日本で価格転嫁が進まないのは、景気が悪いために他ならない。専門家は今後も消費者物価は2%台の上昇にとどまると予測しているが、これは景気が良くならないと言っているのと同じである。

                     (続きは明日)

        ≪24日の日経平均 = 下げ -253.38円≫

        ≪25日の日経平均は? 予想 = 上げ≫

株価は 下げ止まるのか?

2022-05-24 07:30:58 | 株価
◇ 今週も下げれば史上最長の下落に = ダウ平均株価は先週935ドルの値下がり。これで8週間連続の下落となった。これまで8週間の続落は、世界大恐慌の1932年と1940年にあったのみ。したがって、もし今週も下落すれば、有難くない9週連続という史上最長記録を作ることになってしまう。市場では、なんとか反発しないかと気をもんでいる。

ニューヨーク市場の株価をSP500指数でみると、年初から先週末までの下落率は18%だった。同じ期間で調べてみると、1932年は下落率が33%、40年は20%だったから、今回の方が下落のスピードは遅い。また今回の下げは、企業の決算発表内容が予想を下回ったことで加速した。しかし3月決算の発表はほぼ終わったから、この面から悪材料が出ることはない。反発を期待する投資家の声である。

株価が下落した最大の原因は、アメリカの景気先行きに不安が生じたことだ。特に先週は長期金利が反落して3%を切ったにもかかわらず、株価は上昇しなかった。これは景気の見通しが悪化した結果、金利が下がったと考えられたためである。現在のインフレを抑制するためには、金融引き締めが不可欠。すると景気の後退は避けられない。とにかく格言通り「5月は売り」だ。悲観派の声である。

「明けない夜はない」の言葉通り、そろそろ明るくなってもいいのでは。感覚的に言えば、今週は反発する可能性が大きそうだ。しかし、これだけ長期間にわたって株価が下落したのには、もっと大きな意味があるのかもしれない。たとえば金融バブルの崩壊、第2次冷戦の始まりとか。すると株価はいったん反発しても、まだ少し調整すると覚悟しておいた方がいいかもしれない。

        ≪23日の日経平均 = 上げ +262.49円≫

        ≪24日の日経平均は? 予想 = 下げ≫

今週のポイント

2022-05-23 07:08:50 | 株価
◇ 8週連続下げは大恐慌以来90年ぶり = ダウ平均は先週935ドルの値下がり。特に水曜日には1165ドル、2年ぶりの大幅な下落となった。終り値は3万1200ドル台にまで沈んでいる。これで8週間の続落、1932年の世界大恐慌以来の記録となった。この間の下げ幅は3600ドルに達している。エネルギー関連と不動産の一部を除いて、全面安の状況となっている。

市場が弱気に転じたきっかけは、大型小売り企業の決算が予想を下回ったこと。物価高でコストが上昇したためで、こうした傾向が幅広い業種に広がるのではないかという懸念が強まった。言い換えると「インフレ抑止のためには景気後退が避けられない」という見方である。FRBは軟着陸できないという予想が高まったとも言えるだろう。

日経平均は先週311円の値上がり。ニューヨークが大幅に下げた割には、底堅く推移した。出遅れ株を求めて、ニューヨークから東京へ資金が流れたとみられる。3月期決算の発表が進むにつれ、内容が予想を上回ったことも好感された。ただニューヨーク市場が反発に転じなければ、上値は追えないだろう。焦点はやはりアメリカの物価動向に集中してきた。

今週は26日に、4月の企業向けサービス価格。27日に、5月の東京都区部・消費者物価。アメリカでは24日に、4月の新築住宅販売。25日に、1-3月期のGDP改定値、4月の中古住宅販売。なお23日に、日米首脳会談。

        ≪23日の日経平均は? 予想 = 上げ≫

死者が語る コロナ肺炎の危険度 (113)

2022-05-21 07:28:48 | なし
◇ 北朝鮮が絶好の実験台になるかも = 世界の感染者は累計5億2538万人、この1週間で590万人増加した。この増加数は前週より200万人多い。死亡者は628万3587人、週間2万5199人の増加だった。前週より1万1700人拡大している。全体としてやや悪化しているが、その主な原因はイギリスに。この1週間で感染者は200万人、死亡者は1万2700人増えている。統計方法が変わったのか、理由は不明である。

国別に死亡者数をみると、アメリカは累計100万1269人。この1週間で2272人増加し、100万人を超えた。次いでブラジルが66万人台、インドが52万人台、ロシアが37万人台、メキシコが32万人台。さらにイギリスが19万人台、イタリアが16万人台、インドネシアが15万人台、フランスとイランが14万人台となっている。週間の増加数でインドは122人、ブラジルは466人にまで縮小した。

非常事態に陥ったのは北朝鮮。感染者は一気に230万人に達し、死亡者は63人と発表されている。ワクチン接種が行われなかったところへ、オミクロン株がどっと侵入した。中国式の都市封鎖で対応しているが、人口が2500万人と少なく、国家の強制力がきわめて強い。都市封鎖の効果がどのくらいなのか。また導入した中国製ワクチンの効力が、どのくらいあるのか。政府が正確な数字を公表するとすれば、有益なデータが判明するに違いない。

日本の感染者は累計852万3658人、この1週間で25万4602人増加した。前週の増加数より7240人減っている。死亡者は3万0216人、この1週間で241人増加した。前週より6人減ったが、3万人を超えている。連休による人出の増加、大幅な規制の解除。その一方で3回目のワクチン接種者が人口の56.8%に達した。その綱引きの結果だと考えられる。

        ≪20日の日経平均 = 上げ +336.19円≫

        【今週の日経平均予想 = 4勝1敗】    

成長できない 日本経済

2022-05-20 07:26:23 | 景気
◇ 21世紀は年平均0.5%の超低成長 = 内閣府は18日、ことし1-3月期のGDP速報を発表した。それによると、年率換算した実質成長率はマイナス1.0%。このところ1四半期ごとに、マイナス成長となっている。内訳をみると、いずれも年率換算で個人消費が0.2%の減少、企業の設備投資が1.9%の増加、住宅投資は4.3%の減少だった。また輸出が4.7%伸びた一方、輸入は14.1%と大幅に増大している。

個人消費の停滞は、コロナ対策で「まん延防止措置」が実施された影響。また輸入の増大は、原油などの価格が急騰したためで、成長率のマイナス要因となった。さらに補正予算の編成で財政支出が拡大したにもかかわらず、公共投資が13.6%減少したこともGDPの縮小につながった。コロナ規制が解除された4-6月期は、またプラス成長に戻ると考えられる。

同時に発表された21年度の実質成長率は、プラス2.1%だった。3年ぶりのプラス成長で、実質GDPの金額は537兆円となっている。ただ2000年度の実額は485兆6000億円だったから、日本経済の実質GDPは21世紀になってから51兆4000億円しか増えていない。これを年平均の増加率にすると、わずか0.5%ということになる。日本は超低成長国になったと言うしかない。

なぜ、こんな国になってしまったのか。政府・与党はもっと真剣にその原因を究明する必要がある。たとえば財政支出の内容がコロナ対策のような‟対症療法”に使われ過ぎて、将来の成長に向けた投資に使われていないこと。またエネルギー対策が確立できず、原油などの輸入依存度を少しも下げられないこと。「新しい資本主義」などという言葉の遊びは止めて、基本から見つめ直さないと日本経済は浮き上がれないのではないか。

        ≪19日の日経平均 = 下げ -508.36円≫

        ≪20日の日経平均は? 予想 = 上げ≫

Zenback

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