経済なんでも研究会

激動する経済を斬新な視点で斬るブログ。学生さんの就職準備に最適、若手の営業マンが読めば、周囲の人と差が付きます。

補助金どうする ガソリン・電気・ガス

2023-08-19 07:54:27 | 物価
◇ 選挙があるから延長するしかない = ガソリンを1リットル=200円で売る給油所も現れた。資源エネルギー庁によると、14日時点のレギュラー・ガソリン全国平均価格は1リットル=181.9円だった。過去15週間連続の値上がりで、15年ぶりの高値。長野県など一部の山間部では200円を超している。高騰の原因は、①原油の国際価格が上昇②政府による補助金の縮小③円安の進行--の3つ。このうち補助金は9月で終了の予定だから、もし延長されなければ10月には全国平均が200円に接近することになりそうだ。

政府は物価の高騰を抑制するため、電気と都市ガスにも補助金を出している。たとえば電気の場合は、平均的な家庭で月1820円。ガスの場合は月900円をメーカーに支払い、その分だけ料金が安くなるようにしている。だが、この補助金も9月には半額に減り、10月には終了する予定。だから延長されなければ、10月からはその分だけ料金が上がることになる。

自民・公明党の内部では、すでに延長を求める声が湧き上がっている。「補正予算では間に合わないから、予備費を使え」という主張も強い。何に間に合わないのか。もちろん、選挙である。選挙を前に物価が高騰したら、戦えない。このため政府も、補助金の延長はせざるをえない。ただし、その規模と期間をどうするか。いま秘かに検討している最中だろう。

補助金の延長には、反対論も少なくない。ガソリン・電気・ガスの料金を引き下げることは、その消費を促進することにつながる。燃料の輸入を増大させ、脱炭素にも逆行する。そんな政策に5兆―10兆円の税金を使っていいのか。また補助金はすべて一時しのぎの膏薬貼り。もっと根本的なエネルギー構造の改革に、資金を使うべきだ。こうした意見は正論に違いないが、選挙を前にしては影が薄い。

        ≪18日の日経平均 = 下げ -175.24円≫

        【今週の日経平均予想 = 4勝1敗】    

想像を絶する 不動産不況 / 中国 (下)

2023-08-18 07:27:49 | 中国
◇ 融資平台の債務は1300兆円に = 融資平台とは聞きなれない名前かもしれないが、中国の地方政府が設立した一種の投資会社だ。中国の地方政府は法律によって債券発行以外、資金の調達が出来ない。そこで‟抜け穴”となるのが、この融資平台である。まず金融機関からの借り入れ。後ろに地方政府がついているから、いくらでも借りられた。また土地の使用権を業者に売って、資金を調達する。土地はすべて国が所有しているから、原資は無限だ。

北京政府の指示のもと、これまで地方政府はこうして調達した資金を使って、不動産の開発を推進してきた。それが高度成長を生み出す源泉ともなってきたわけだ。ところがバブルが崩壊、土地の買い手が見付からない。IMF(国際通貨基金)の推計によると、金融機関からの借り入れも累計1300兆円に達したという。これ以上は借りられない。

要するに資金不足。だから景気が悪くなってきても、財政面からの対策が打てない。仕方がないので、いまは人民銀行の金利引き下げに頼っている状態だ。しかし金利が下がったからと言って、住宅を買う人は限られる。一方、売りに出されているのはみな投機目的で購入された物件だから、金利とは関係なく早く売ってしまいたい。利下げの効果は、どうしても限定的にならざるをえない。

中国共産党は7月下旬に開いた中央政治局会議で「不動産の需給関係に重大な変化が生じた」と認めた。しかし習近平政権はまだ「ことし5%成長」という目標を降ろしていない。近く大規模な景気対策を打ち出すという推測も出ているが、真偽のほどは全く不明。仮に中国の成長率がゼロに近付けば、世界経済への影響もきわめて大きい。バイデン米大統領は「中国経済は時限爆弾、いまの成長率は2%程度」と述べている。

        ≪17日の日経平均 = 下げ -140.82円≫

        ≪18日の日経平均は? 予想 = 下げ≫

想像を絶する 不動産不況 / 中国 (上)

2023-08-17 08:32:15 | 中国
◇ 主要な経済指標がいっせいに悪化 = 中国統計局は15日、7月の主要経済指標を発表した。それによると、鉱工業生産は前年比3.7%の増加で、6月の4.4%増加から悪化。小売り売上高は2.5%の増加で、6月の3.1%増加から悪化。固定資産投資額も1-7月は3.4%増加で、1-6月の3.8%増加から悪化。また失業率も5.3%で、前月より0.1ポイント悪化した。こうした経済の不振は、想像を絶する不動産不況が主たる原因。たとえば不動産の投資額は17か月連続で、販売額は25か月連続で減少した。

とにかくマンションなど住宅が売れず、価格がどんどん下落している。統計局の発表によると、新築住宅の販売面積は22年中に26.8%減少したあと、ことし1-6月も2.8%減少した。この結果、7月の新築住宅の販売価格は主要70都市のうち49都市で下落した。特に地方の中小都市では売れず、なかにはマンションの1戸を買ったら、もう1戸がおまけという例まであるという。「住宅価格は上がり続ける」という神話は、完全に崩壊してしまった。

日本のテレビ・ニュースでも、高層マンションが林立しながら無人の街となった地方都市の風景がよく映し出された。そこで思い出されるのが、経営不振に陥った不動産最大手の恒大集団だ。その恒大が発表したところによると、22-23年の2年間で最終赤字は5800億元(約11兆2000億円)になる見通し。加えてやはり最大手の不動産会社である碧桂園が、ことし1-6月に500億元の赤字を出したと発表した。

不動産会社の従業員は、昨年だけで10万人が解雇された。そして住宅の売れ行きが悪くなると、自動車や家具、家電などの消費も減退する。それがいま生産や小売り売上高、雇用などの経済統計を、いっせいに悪化させる結果となって現われているわけだ。しかも不動産不況は地方政府の財政を圧迫、財政面からの対策を打ち出す余裕すらなくなってしまった。事態はきわめて深刻である。

                      (続きは明日)

        ≪16日の日経平均 = 下げ -472.07円≫

        ≪17日の日経平均は? 予想 = 下げ≫

持続性に欠ける 6%経済成長

2023-08-16 07:39:30 | 景気
◇ 物価高で伸び悩む個人消費 = 内閣府は15日、ことし4-6月期のGDP速報を発表した。それによると、年率換算した実質成長率は6.0%で、事前の予測を大きく上回った。四半期の成長率が6%に達したのは、20年10-12月期以来のこと。ただ内容をみると、外需の貢献度が7.2%だったのに対して、内需はマイナス1.2%と振るわなかった。このため7-9月期以降もプラス成長を持続できるかどうか、疑問視する専門家も少なくない。

GDPの構成項目をみると、いずれも年率換算で個人消費は2.2%の減少。住宅投資は7.7%の増加、企業の設備投資は0.1%の増加、輸出は13.6%の増加、輸入は16.2%の減少だった。コロナの5類移行で経済の正常化が進んだのに消費が減少したのは、物価高の影響が大きい。また輸入が大幅に減少したのは、原油の国際価格が下がったため。このように燃料の輸入価格が減ると、成長率は上向く。このことは銘記しておく必要があるだろう。

ことし4-6月期の実質成長率はアメリカが2.4%、ユーロ圏が1.1%、中国が3.2%だった。したがって日本の6.0%成長は断トツに高い。だが今後もその優位を持続できるかというと、かなり覚束ない。というのも物価高で実質所得が伸びず、消費の委縮は続きそう。加えて原油の国際価格が上昇し始めたから、輸入の減少も期待できないからだ。

高い成長率を持続するためには、まず物価を下げて消費の回復を計ること。次いで輸入燃料を減らうようなエネルギー政策を推進することが肝要だ。しかし政府・日銀は、それと反対の方向に動いている。補助金をいくら出しても、物価上昇の原因には触れない。ゼロ金利政策に固執して円安を放置、輸入価格を引き上げている。だから企業も安心して設備投資を増やせない。

        ≪15日の日経平均 = 上げ +178.98円≫

        ≪16日の日経平均は? 予想 = 下げ≫

「インフレを克服」は 時期尚早?

2023-08-15 08:17:49 | アメリカ
◇ サービス価格の上昇は続く = 米労働省の発表によると、7月の消費者物価は前年比3.2%の上昇だった。6月の3.0%上昇より、やや上昇率が拡大している。アメリカの物価は昨年6月の9.1%上昇から順調に鈍化してきたが、13か月ぶりに上昇率が広がった。ただ市場では「この小さな反騰は一時的なもの。インフレは克服された」という見方がいぜん大勢を占めている。しかし「インフレ圧力はまだ強い。インフレ克服説は時期尚早」という慎重論も少なくない。

慎重論の根拠の1つは、エネルギーと食料品を除いたコア指数が4.7%上昇とまだ高いこと。ガソリン価格は大幅に下がったが、それを除くと物価はまだ高水準。さらに人手不足から人件費が高騰しており、特にサービス価格は今後も上昇が続く。要するに現在の状況は、コロナ禍やウクライナ戦争による当初の衝撃から回復しただけだ。したがってインフレ対策はまだ必要だし、これが9月の利上げ説にもつながってくる。

ヨーロッパでは、もっと状況がはっきりしている。EU統計局の発表によると、ユーロ圏の7月の消費者物価は前年比5.3%の上昇だった。ここでも物価の上昇率は順調に縮小しているが、それでもECB(ヨーロッパ中央銀行)は9回目の利上げに踏み切った。コア指数は5.5%上昇と高く、アメリカのような「インフレ克服説」は全く聞かれない。

さて、日本の場合はどうか。総務省の発表によると、6月の生鮮食品を除いた消費者物価は前年比3.3%の上昇だった。数字の上からみる限り、日本の物価の方がアメリカよりも高くなっている。ところが不思議なことに、日本ではインフレ警戒感が全くない。経済全体がデフレ体質から抜け出せないためなのだろう。しかし日本でも人手不足から人件費は上がる方向。これに原油価格の高騰が加わったら、インフレ問題が一気に噴き出すのではないか。

        ≪14日の日経平均 = 下げ -413.74円≫

        ≪15日の日経平均は? 予想 = 上げ≫

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